人間側の一方的な都合で、樹木が衰弱している事例が絶えません。
それは、樹木への悪意からそうなったのではなく、樹木そのものへの認識不足、あるいは樹木へのちょっとした気遣いが不足している場合が多いものです。
ここではよくある案件から、樹木の代弁者として気をつけてほしいと思うことをご紹介します。
樹木医 塚本 武司 (認定登録第842号)
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あなたの大切な樹木、「先枯れ」を起こしていませんか?
CASE 1 「覆土」にご用心!
よくあるのが、この「覆土」による衰弱、枯死です。 
私たちは、家の建て替えやリフォーム、あるいは敷地の造成などで「土」を動かすことは意外と多いものです。 でも、そこに根を張った既存の樹木があっても、その周りに安易に「土」を盛ってしまうことがよくあります。樹木に関心のない土木や建築業者ならまだしも、樹木を扱う造園業者ですら心ない人は平気でやっていたりしますので、まだまだ一般的に充分に認識されてはいないようです。
ご存知のように樹木の根は単に水分を吸収するだけでなく、「呼吸」をしています。ですから、土の通気不良は樹木に致命的なダメージを与えてしまいます。 特に根元周辺を「土」で埋めて「かさ上げ」すると、埋められた地盤への通気が悪くなり、樹木の根が著しい呼吸困難に陥ってしまうのです。盛土の厚みが薄い場合には樹木は空気を求めて地際から新根を発生し、「二段根」を形成しようとします。なかには、その二段根でかろうじて生き延びる樹木もありますが、多くは発根が間に合わず、徐々に旧根が衰弱して枯死にいたります。 また、盛土が厚いと数ヶ月であっという間に枯死する場合もあります。( 障害のでる盛土の厚みは樹種や条件によって変わりますので、定量的に何センチ以上は危険とかいいにくいのが現状です。わずか10cmでも障害となる場合もあります。)

どうしても樹木周辺をかさ上げする場合には、旧地表面への通気の確保と排水をとることがポイントです。パーライトなどの通気性の高い資材を旧地表面や幹周りに厚く敷き詰め、通気性・排水性を確保するのが実績のある効果的な手法です。でも、これはどうしようもない場合であって、できれば「覆土」は避けてほしいものです。また、覆土してしまったものは、手遅れにならないうちに復旧や樹勢回復処置を早めにしましょう。
もしもお庭のリフォーム等をお考えの場合には、既存の樹木にも充分配慮したプランニングと施工技術が必要です。
あなたのお庭の樹木はどうですか? 異変はないですか?
衰弱する原因はさまざまです・・・
手遅れにならないうちに、早めに原因をつきとめ対処をしましょう!
樹木医 塚 本 武 司 (日本樹木医会会員 認定登録第842号)
町
あなたの大切な樹木、幹が腐っていませんか?
CASE 2 枝を切るのは慎重に・・・
あなたは樹木の剪定をしたことがありますか?
本格的な剪定じゃなくても、伸びすぎて邪魔になった枝をノコギリで切り落としたことぐらいはあるかもしれません・・・・ 私たちは、「邪魔だ・・・」とか「伸び放題で見苦しい・・・」などの理由で、平気で樹木を切ってしまうことが多いものです。また、木はどんなに切ってもいくらでも芽が吹いてくると安易に思い込んでいたりします。 でも実は、「枝を切る」という行為は、樹木そのものを枯らしてしまうこともある「危険な行為」であることを知っておかなければなりません。
まず、樹木にとって「枝葉」はエネルギーを生産(光合成)してくれる重要な部分です。これを大量にとってしまうと、確実に木を弱らせ、病害虫に対する抵抗性を弱めてしまいます。よく、強剪定したあとに幹や大枝から勢いよく「徒長枝」が伸びてきますが、それは決して樹勢が強くなったのではなく、葉の減少に危機感を持った樹木が樹体内の「貯え」を使って慌てて葉を出している姿なのです。この強剪定を繰り返していると、樹木はいずれ貯えを使い果たしやがては枯れてしまいます。
また、間違った位置で枝を切ってしまうと、そこから樹木を腐らせる「腐朽菌(キノコ類)」が侵入し、やがて幹の中が空洞になって倒木・枯死という大きな不安を抱え込んでしまうことになります・・・

では、正しい剪定とはどんなものでしょうか?
(ここでは、正しい剪定の位置(切る位置)のお話をします)
正しい剪定の位置を知る前に、まず樹木の構造とりわけ「枝と幹がつながっている部分の構造」、そして「腐朽に対する防御機能」を知っておきましょう。
「枝」は発生した時点から「幹」に囲まれながら肥大成長を行います。幹と枝の細胞組織はつながってはいますが構造的には別のもので、常に幹の組織が枝を支えるように張り出しているのです。よく枝の付け根の下部にふくらんだ部分(ブランチカラー)が現れますが、これはあくまで幹の細胞が枝を覆って部分であることを認識して下さい。これに傷をつけるということは、枝ではなく幹に傷をつけていることになります。また、枝の付け根の上部には樹皮がぶつかり合ったようなシワが現れます(バークリッジ)。これが枝と幹の境界部分を示しています。 
また、枝の基部(内部)には「保護帯」という腐朽菌にたいする防御層があり、腐朽が枝から幹内部に侵入するのを防ぐ役割を担っています。でも、何らかの原因でこの「保護帯」が破られると腐朽は幹内部へ侵入してしまい、後に大きな問題をもたらします。ですから、剪定する際にはこの「保護帯」を無視した方法をとってはいけないのです。
枝が自然に枯れた場合、健全な樹木であればこの枝と幹の境(保護帯)で枯れ止まります。枝を切る場合はこの枝と幹の境で切ることが大切なポイントなのです。
剪定位置①で切る方法を「フラッシュカット」といいます。一見すると切り口もスッキリとして良いように思えます。でもここで切るということは幹の組織まで切り取ることになり、傷口も大きくなってなかなかふさぐことができず、病原菌も侵入しやすくなります。(正しい剪定方法が確立される以前には、切った後の見栄えが重視されてフラッシュカットが一般的になされていました。本職の植木職でも未だにこういう切り方をする人がありますがマネをしないで下さい・・・)
一方、③で切って「切り残し」ができると、幹の組織が傷口をふさごうとしても枝の残りが邪魔をしてなかなかふさぐことができません。そして樹勢が強ければ腐朽菌を「保護帯」で防御できますが、樹木が弱っていると突破され幹の中まで腐ってしまいます。
②で切るのが最も良い方法です。この位置で剪定されると、巻き込みは切口の全周から始まりやがて閉鎖されます。でもこれも決して完璧というわけではなく、樹木が弱っていると病原菌が侵入することがあります。生きた枝を切られるというのは、樹木にとってはとてもつらく危険なことなのです。樹勢が弱っている木であればあるほど、1本の枝も大切にする必要があるのです。
正しい知識を持って、できるだけ傷を最小限にとどめる剪定をおこないましょう。
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