小さな庭こそ広く見せる工夫を・・・さまざまな造園技法

小さな庭づくり

視線と錯覚で広く見せる工夫があります。

狭いから・・・といって諦める必要はありません。どんなに狭い空間でも見せ方を工夫することで趣きのある素敵な庭をつくれます。 ポイントは「視線の誘導」と「見た目の錯覚」です。 狭い庭は「視線」や「目の錯覚」を利用して広く見せましょう。伝統的な造園技法には実際の空間よりも広く遠く感じさせるさまざまな手法があります。


 

1 基本は「遠近法の原理(遠くのものは小さく見える)」を利用します。

例えば、手前に大きな樹木や石などを配置し、奥にはあえてそれより小さなものを配置して実際以上に奥行き感を強調する手法です。人は同じ物の大きさが違って見えれば本能的に「遠近の差」として錯覚してしまうのを利用した伝統的な空間手法です。物の高さを変える(高低差)のも同じ手法です。 また、通路などは奥へ行くほど幅を細くする(先細り)というのもよく使われる手法で、この場合はその視線の先にオブジェなどのフォーカルポイントがあると視線が奥へ誘導されるのでなお効果的でしょう。

遠近法の利用、先細り
遠近法の利用、先細り

2 曲線や蛇行、明暗・・・遠近感を意図的に狂わせるさまざまな手法。

曲線、蛇行・・・遠近感を狂わせる

例えば、通路は直線にするより曲げる方が実際にも視覚的にも距離が伸びますので、奥行きを強調する基本的な手法といえます。実際の庭ではその曲げ加減や床面の意匠等複雑な要素が絡み合いますので決して単純ではありませんが、うまく取り入れれば心地よい空間が生まれます。 また、明るい色は近くに迫って見え、暗い色は遠く離れて見えますので、これを花や葉の色を使って意図的に遠近感を強調することもできるでしょう。

3 手前の物越しに奥を見せる。

例えば、手前に幹を見せるやわらかな樹木を植えてその樹木の幹越しに奥の空間を見せる手法で、造園ならではの空間演出といえます。樹木が完全な壁になってしまうのではなく、チラチラと奥の空間が見えることが重要で、奥の空間がより意識され、実際以上に奥行きや広がり、深みを感じさせます。また、樹木の変わりに視線が抜けるような格子(ラティス)やフェンスも同様で、樹木ほどの深みはないものの実際以上に奥行きを感じさせます。

樹幹ごしに奥の空間を見せる

4 狭い空間もあえて適度に区切ってみる。

例えば狭い空間だと思ってこまごましたものばかりを取り入れてしまうと、逆にメリハリがなく、間延びしたような空間になってしまうことがあります。そんな時はあえてスペースを区切ってみるとよいでしょう。うまく区切ることができれば各空間にメリハリが生まれより広く感じられます。区切り方や素材、高さ等は状況によって変わりますが、視線の抜けるようなラティスややわらかな樹木等圧迫感の少ないものが効果的でしょう。

5 フォーカルポイントで視線を誘導する。

雑然とした、あるいは漫然として間延びしたような空間では人の視線は空間をさまよい、印象の薄い味気ない空間になりがちです。こういった場合、視線を誘導して空間にメリハリをつけることで引き締まって見え、結果的に広がりを感じるようになります。いわゆる「フォーカルポイント」と呼ばれる手法で、庭では壺、像などのオブジェ、ベンチ、石灯籠などがよく使われます。置く場所によって大きくその効果が変わってきますので、庭のスタイルにも配慮しながら視線の誘導を意識して効果的なポイントを見つけましょう。

フォーカルポイント、空間を引き締める

6 あえて隠すことで奥行き感を強調する。

フレームで隠す

あえて遮蔽物により目線を切ったり隠したりすることで人は奥の空間への広がりを想像し、実際よりも広く感じるという手法もあります。例えば手前に樹木を配置して目線を切ったり、袖垣で奥を隠したりなど、隠し方、隠す程度等によってさまざまな効果や印象が生まれるでしょう。 また見せたいものの周りを壁や庇、樹木などの遮蔽物で囲う(フレーム効果)ことで見せたいものを強調し、空間を引き締め、結果的に実際よりも奥行きや広がりがつくれます。


 

このように、視線を引き付けたりそらしたり隠したり・・・庭では「視線の誘導」を考えることが空間づくりの重要な要素になります。狭い庭だからこそ、このような手法を効果的にさり気なく取り入れてみたいものです。・・・ 実際の広さに関係なく、「良い庭」というものは広く感じるものです・・・。


(小さな庭づくり、大阪)


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