デッドスペースを活かしたい!・・・斜面の庭づくり

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もしもあなたの家の敷地に有効に活かせていない部分があるとしたら、何だかモッタイナイ気がしませんか?

例えば、よく有りがちなのが道路と敷地に大きな高低差があって、そこが「斜面」(法面”のりめん”ともいいます)で処理されているケースです。 フラットな「平地」ならいろいろと使い勝手もいいのですが、「斜面」では大きな制約がかかりどうしても使えないスペースになりがちです。

このような使えないスペースを「デッドスペース」(死んだ空間)と言ったりしますが、広い敷地ならいざ知らず、限られた土地ではできるだけ有効に活用したいものですね。・・・ ここでは、デッドスペースになりがちな斜面のスペースを「楽しめる庭」にした事例をご紹介します。

道路からも目につく大きな斜面・・・どうにかしたい!

今回ご紹介する事例は大阪平野が一望できる大変見晴らしの良い高台に位置しているのですが、あいにく道路側には大きな高低差がありました。

道路からは見上げるような立地で、前面にはアプローチの階段と掘り込みガレージがあり、残りの部分が大きな斜面になっています。

前面道路からはこの斜面がすごく目につきます。

勾配もきつく利用しづらそうなのですが、オーナー様としては広さがあるだけに何とか使えるようにしたい!外からもよく目立つので見栄え良くしたい!などの思いがあるようです。・・・

放置できない斜面・・・でも立地や予算、目的に応じたさまざまな方法があります。

実はこのような斜面は裸地のままにしておくと、雨水による土壌の浸食が避けられません。

たび重なる雨水の流れによって表土が溝状に深く削られてしまうのです。 これを防ぐ方法としては、緑化や構造物等によるいくつかの手法があります。

最も簡単にできるのは芝生による全面張りでしょう。最も施工コストの安いシンプルな斜面の保護法かと思います。ただ、意外と後々の管理が面倒で、手間やコスト等の負担がかかるのは要注意です。

また、思い切って斜面をフラットな平地にしてしまう手法もあります。 斜面上に段々に土留めを設けて土を入れ棚田状にしてしまったり、あるいは斜面上にウッドデッキなどを大胆に張り出す方法です。これで使いやすい平地になりますので非常に有効なやり方と言えますが、どうしても大掛かりになりコストも高くつくのが難点と言えます。

単なる斜面緑化ではなく、庭らしい趣きを表現したい!

今回の事例では、単なる芝生張りではなく、限られた予算の中でできるだけ樹木や動線を取り込んで何とか「庭らしい趣き」を作ってほしい!とのご要望です。

浸食を抑制するための「土留め」をどうするか、庭らしい趣きを表現するための「植栽」や回遊できる「動線」をどうするか・・・検討の末、土留めを兼ねて「景石」を据え、ロックガーデン風の庭としました。

ただ、景石は単にランダムに据えるのではなく、いわゆる「法面筋工”すじこう”」の要領で筋状に水平方向に石を並べてみました。

これは林野などでも時折り見られる手法で、土留めには一般的に蛇かごや間伐材などを活用するようです。広い斜面を水平につなげた土留め材で分割することで雨水を分散させ、表面土壌の浸食を抑制するというものです。

このロックガーデン風の空間に、雑木類で広がりや季節感等を表現し、併せて横に広がる生長の早い地被類(グラウンドカバー)で早期の被覆を図るようにしました。 また動線は御影石で堅固な階段を設け、少しでも庭の回遊を楽しめるような工夫をしています。・・・

単なるデッドスペースからすごく目を引く修景に変わりました。 見上げたり、見下ろしたり、回遊したり・・・不利な立地でしたがかえって視覚の変化も楽しめる「庭」になりました。 ありがとうございました。

 

(使用樹種) アオダモ、常緑ヤマボウシ、イロハモミジ、ヤマツツジ、カラタネオガタマ、ヒュウガミズキ、レモン、ビヨウヤナギ、アベリア・フランシスメイソン、アベリア・コンフェッティ、リッピア、ヒメツルソバ、ヤブラン、キチジョウソウ、ヒペリカムカリシナム、タマリュウ、フッキソウ ほか


(小さな庭づくり、大阪)


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