やってみよう!ガーデンデザイン1(情報収集、構想、ゾーニング)
ガーデンデザインの進め方
いざガーデンの設計をしようとしたとき、いきなり植える植物の検討に入ったり、どんな飾りつけをしようかなどと細かなところの検討から入ってしまう人がいますが、おすすめできる手法ではありません。・・・
よほどの達人でもない限り、当然踏むべきステップというものがあります。
なぜなら、ガーデンはガーデンだけで完結する存在ではないからです。・・・
ガーデンは現実の空間として周りの環境や生活と切っても切り離せない存在であり、予めガーデンと関連する諸条件を踏まえておかないと実際にはデザインそのものができない、ということになります。・・・
ガーデンデザインの進め方にはデザイナーによって、あるいは諸条件によってさまざまな手法があると思いますが、ここでは一般的な手順を大まかにお話します。
STEP1 情報収集・・・条件の整理と把握。
デザインを始める前に、まずプランニングの前提となる情報を収集します。
大別すると、①現場の状況と②住まい手の情報、条件などを収集する必要があります。
一見何でもないような気がしますが、収集する情報や条件の精度を高めることが良い設計をするためにはどうしても必要なのです。これを怠れば、どんなに優れた設計者でも的外れな、あるいは中途半端なそれなりの計画しかできません。・・・
1)現場状況の把握
現場の「敷地図」や「建物配置図」を元に現場にて調査を進めます。もし基本図面がないようでしたらあらためて現地の測量(採寸)をする必要があります。
調査する内容としては、以下のようなものがあります。
※敷地、建物の状況は? 敷地・・・位置、形状寸法、高低差、方位、境界、土壌などの確認。 建物・・・配置、形状寸法、様式、一階間取り、立面の様子などの確認。 既存の設備、構造物・・・給排水設備やその経路、ガス電気等位置、既存樹木、 既存構造物、埋設物など ※周辺の環境は? 前面道路・・・幅員、勾配、側溝、境界杭、電柱、交通量など 隣地との取り合い・・・隣地側の構造物、樹木、隣家の窓や開口部の位置など 自然環境・・・日照条件、風向き、微気候、地勢、植生など。 その他、周りの街並み、隠したい風景、取り込みたい風景など・・・ ※法的条件はどうか? 関係法令(建築基準法、都市計画法、宅地造成等規制法、条例など)の確認。 |
上記諸条件のうち、敷地建物の形状寸法や方角、周りの環境等は基本データとして最低限把握しておきましょう。
特に、実際には隣地との関係や境界杭などの確認は必須になります。境界が不明確では施工はできませんし、あとあとトラブルがないようにしなければなりません。
また、敷地の高低差や勾配も重要で、段差の処理や排水計画等に欠かせない情報になりますし、さらには既存の構造物や樹木、埋設物等もできるだけ詳細に把握しておきたいものです。・・・
また、調査にあたっては現況写真を撮っておくと後で役に立ちます。特に室内から窓越しに撮ったり、修景のポイントになると思うところ、その他既存の構造物など気になるところはおさえておくとよいでしょう。
余裕があれば、現地に実際に立ちながら時間をかけてイメージを膨らませることも大切です。その場所が醸し出すイメージを考えてみたり、広さや距離感がどの程度のものか実際に肌で感じてしっかりと理解しておきたいものです。・・・
2)住まい手の情報、条件の把握。
下記のような設問を中心に、住まい手の希望や考えをヒアリングしておきます。
まず基本的な設問事項としては、家族構成や趣味、好み、ライフスタイル、ペットの有無、予算などでしょう。・・・
併せてしっかりとヒアリングしておくべきこととして、
※「ガーデンを作る「目的」は何ですか?(そこで何をしたいですか?)」
これは必ず確認すべき設問です。それは目的が変わればデザインも変わってくるからです。
もちろん目的は複数あってもよいのですが、スペースやコストが限られていますからすべてを取り入れられるとは限りません。必ず「優先順位」を明確にしておきましょう。
※「つくりたいガーデンのイメージやスタイルはどんなものですか?」
住まい手によってはかなり詳細にイメージを膨らませている方や、あるいはまったく漠然とした方などさまざまでしょう。もし、お気に入りの写真や雑誌などがあれば見せていただきながら、できるだけイメージの共有をはかることが大切です。
※「取り入れたい要素は何ですか?」
例えば、ウッドデッキやテラス、果樹、花壇、菜園、芝生、駐車スペース、照明、収納、目隠し、お気に入りのオブジェなどなど。・・・これも複数あってもよいですが「優先順位」は明確にしておきましょう。
また、植物はメンテナンスが不可欠ですので、植物に応じた手入れの時間がとれるかどうかの確認は必要です。ライフスタイルを考慮し、植物を取り入れすぎないことも大切です。・・・
3)現況図の作成。
なお、収集した情報を集約した図面として「現況平面図」を必ず作成しておきましょう。
現地測量した結果を図面の縮尺にしたがって作図しておきます。この図面に周りの環境や住まい手の希望などさまざまな情報を書き込んでいくとよいでしょう。・・・
このように、プランニングの前提として、できるだけ多くの情報を取り入れておきたいものです。
慣れてくると、現地調査やヒアリングをしているうちにガーデンの大まかな構想がまとまってくることが多いものです。・・・
STEP2 テーマ、コンセプトの設定
デザインにあたっては、先ほどの「現場の状況」や「住まい手の希望」などの情報を手がかりに、まず、庭のテーマ(コンセプト)を決めます。
決め方としては、ガーデンにタイトルをつけるようなつもりで考えてみるとやり易いかもしれません。
例えば、アジアンテイストを好む住まい手が「テラスでゆっくりくつろぎたい」「隣家の目隠しを兼ねた大きな木が欲しい」・・・などの希望がある場合、「樹木に囲まれた、くつろぎのアジアンテラス」というテーマ設定にしてみます。
このテーマ設定は一見面倒で余計な気もしますが、ガーデンの「性格」とか「方向性」を確認する重要な要素でもあります。これを曖昧なままにすすめていくと、途中であれこれとやりとりしているうちに次第に方向性がずれていき、仕上がったときに中途半端なぼやけたものになることがあります。・・・
デザインは定めたテーマ、コンセプトに沿ってできるだけシンプルな方向へもっていくことが大切です。
STEP3 ゾーニング
次に「ゾーニング」という作業を行います。
庭の世界では「地割り(ぢわり)」とも言いますが、大まかな配置計画や動線計画を考えることです。同じように建築では部屋の「間取り」を考えますので、言い換えれば「庭の間取り」作業と言ってもよいでしょう。
この作業をせずにいきなり詳細な設計をはじめてしまうと、実際に使い勝手が悪くなったり、全体のバランスを崩してしまうことになりかねません。
ゾーニング作業は、予め入手したさまざまな情報(現場の条件、住まい手の条件)を前提に、動線や視線を考えながら、各スペースに取り入れたい要素を配分していきます。特に機能面(使い勝手)での問題が生じないように配慮しながら、大まかに計画のアウトラインをつくり上げていきます。この段階ではだいたいの位置や広さを検討するにとどめて、あまり細部のデザインにとらわれないように心がけましょう。
ガーデンの規模にもよりますが、具体的には、・・・
大きめの敷地の場合、例えば「前庭」「主庭」「中庭」「アプローチ」「サービスヤード」「駐車スペース」・・・などの大きなくくりからスペースの配分をしていきます。・・・
また小さな庭ですと、「テラス」「花壇」「樹木」「通路」などといきなり細かく配分をすることになります。
ただ、ゾーニングは限られたスペースを配分、割り振りしますから、何もかも要望や機能を満たせる訳ではありません。予め決めておいた「優先順位」に従って割り振っていくことが大切で、無理に詰め込み過ぎないようにします。
また重要なのが「動線」と「視線」の検討です。
ガーデンの中で「どこを通路にするか。」「どこをどう見せたいか(あるいは見せたくないか)。」を慎重に検討します。まずメインの景色(主景、フォーカルポイント)の位置や見せ方を決めると、そこを基点にしてガーデン全体のデザインを展開しやすいとも思います。・・・
(つづく)