庭のアクセント、 カシワバアジサイ・・・

blog みどりびんぐ

四季の花木

カシワバアジサイ (柏葉紫陽花)

ユキノシタ科 アジサイ属 落葉低木 花期6~7月

うっかりして腰をひねってしまいました。・・・いわゆるギックリ腰というやつです。

疲労とストレスが原因でしょうか。鍼灸の先生に鍼を打ってもらっていただき、しばらく安静にせよとのこと。・・・情けないかぎりです。・・・

カシワバアジサイの花序
カシワバアジサイの花序

しかたなく床に伏せながらふと庭を眺めてみると、いつの間にか「カシワバアジサイ」が満開になっています。しばらく放任していたので背丈が高くなり枝も暴れてしまっていますが、かえって花着きはよいようです。

「カシワバアジサイ」は名前のとおり、カシワ(柏)の葉を思わせる切れ込みのある大きな葉をつけるのが特徴です。

また花序は縦長の円錐状になり、大きく華やかで大変見応えがあります。これらの花序にはアジサイらしく小さな「両性花」とがく片が大きく発達した「装飾花」が混在しているようですが、最近は花序がほとんど装飾花からなるものや装飾花が八重咲きになった園芸品種などが多く出回っているようです。

カシワバアジサイの葉
カシワバアジサイの葉

アジサイというと日本の植物という印象が強いのですが、近縁の植物は北米東部から南米にかけての地域にも分布するようで、カシワバアジサイも北米原産のアジサイです。

いわゆるガーデニングブームのころから盛んに庭づくりに多用されましたが、その特徴のある花には他にない魅力があり、また樹姿には野趣もあり、庭のアクセントとして大変重宝したものです。・・・

ところで、カシワバアジサイというと思い出すことがあります。・・・

ずい分以前のことですが、「山歩き」が好きで近郊の山々を夢中になって歩きまわっていたころ、奈良の奥地、大峰や大台山脈の深山で時おりこれとよく似たアジサイを見かけたことがありました。カシワバアジサイのように切れ込みのある大きな葉があり、当時はてっきりこれをカシワバアジサイの自生だと思い込んでいたのです。恥ずかしいかぎりですが、これが「ヤハズアジサイ」だと知るのは後のことです。・・・

両種は近縁でも何でもなく、花はまったく違う形態ですので、もし花が咲いていたらもっと早く気づいていたかもしれませんが、葉だけだとその当時はわかりませんでした。(というより、そもそもカシワバアジサイは日本に自生しないのです・・・)

ヤハズアジサイ(「堀田満著、野山の木」より)
ヤハズアジサイ(「堀田満著、野山の木」より)

「ヤハズアジサイ」はその名のとおり葉の形が「矢筈(やはず:矢の末端で弓の弦を受ける部分。二又に分かれた形、文様。)」に似て葉先が二又に分かれるのが特徴で、注意深く観察すれば見分けられるはずです。

ただ、幼葉では葉先は普通に尖っていて、成葉になるにつれて徐々に主脈(中心の葉脈)の生長が鈍り、側脈の方が長く伸びてきて「矢筈型」になるようで、幼葉や成葉、その中間葉が混在していると分かりにくかったのかも知れません。

また、ヤハズアジサイは日本固有種で、特に中央構造線よりも南にしか自生しない特殊な樹種のようです。確かに近畿では紀伊半島付近でしかお目にかかったことはありません。当時そうと知っていれば、写真を撮るなり、葉の標本を採取するなりしておけばよかったのに、と残念な思いがします。・・・

このように葉の似る両種ですが、ヤハズアジサイにはカシワバアジサイほどの(庭園樹としての)鑑賞性はありませんし、平地では栽培も難しいかもしれません。・・・

やはり身近に置いて観賞するのはカシワバアジサイとし、ヤハズアジサイはあくまで遠く深山に出向いて自然の姿を愛でるのがよいようですね。・・・

・・・・・・・

体の自由が利かず、床に伏せっているとあらためて健康の有難みをしみじみ実感してしまいます。・・・庭の「カシワバアジサイ」が懐かしい山歩きの楽しみをまた思い出させてくれました。

屋久島宮之浦岳鞍部にて

屋久島宮之浦岳鞍部にて

元気になったら、とりあえず近場の金剛山や慣れ親しんだ六甲山あたりから歩き始めてみたいものです。・・・

懐かしい「ヤハズアジサイ」にもいつかまた再会できるでしょうか。・・・


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