特異な石庭・・・抽象表現の石組み
とある旧家の庭の改修プランです。
家屋の前面道路が拡張されることになり、敷地の大幅なセットバックを求められ、必要に迫られての改修となりました。
元々のお庭は石組みを多用した立派な池庭でしたが、広さが半分ほどに狭められるようです。
オーナーとさまざま協議の末、池庭はあきらめることになりました。
そして、既存の石材を使っての枯山水による石庭とし、既存の築山部分を活かして庭を再構築することになりました。・・・
ただ、今回の特異な点として、オーナーの要望が「石組みを使って「蛇」を表現してほしい。」というものです。
はじめはビックリしました。・・・でも、(ここでは詳しくお話しできませんが、)お話しをお伺いして納得し、作庭にとりかかりました。
日本庭園の石組みは、自然の風景をそのまま写したような写実的な山水表現もできますが、やはり真骨頂は自然風景をそのまま表現するのでなく、象徴的、あるいは抽象的な立体造形表現にあります。
今回、特異なテーマではありますが、写実的すぎる表現ではなくあくまで抽象的な表現とし、既存の石材だけを使ってどこまでできるかの挑戦でもありました。
作業は旧庭園の撤去作業から入り、崩した石をひとつひとつ吟味しながら石組みの構想を組み立てていきました。
そして、築山の上でトグロを巻きながら首を持ち上げているさまと、身体を山裾に投げ出しているさまを抽象的に表現しています。
限られた条件でぎりぎりの造形でしたが、何とか納まってくれました。
それと、もう一点特異な要望としては、築山の一部に小型プールを設けたことです。
人が水浴びできる、風呂のような小さなプールで、しかも形状は「勾玉」形です。
石組みの中にコンクリート打設で成形し、防水処理のうえ、仕上げは洗い出し仕上げにしています。
大変苦心しましたが、悦んでいただき何よりでした。
(小さな庭づくり、大阪)