「本炉壇」の塗り替えをさせていただきました。

お世話なっているお茶室のオーナーさまより、知人から「炉壇」をもらい受けたがかなり傷んでいるので補修してほしいとのご依頼がありました。・・・

見せていただくと、いわゆる「本炉壇」と呼ばれる本式のものでした。
茶室の畳のなかに設置される小さな囲炉裏を「炉壇」といいますが、近年は銅板や陶板、ステンレスなどさまざまな材質で作られているようですが、伝統的な本式のものは中が「土壁」で塗られており「本炉壇」と呼ばれています。

補修前の本炉壇
持ち込まれた補修前の本炉壇

これの製作や塗り替えには、本来「炉壇師」と呼ばれる専門職人が携わるものですが、オーナーいわく今は炉壇師は数も少なく高くつくし、今後も塗り替えていきたいのでぜひ私にやってほしいとのこと。・・・

本炉壇 補修前
本炉壇 補修前

躊躇もありましたが、出入されている茶道の先生の後押しもありお引き受けすることになりました。・・・

現状では外枠はしっかりしたものですが、中の土壁が角が欠けたり、下の方では中塗りも一部剥がれ落ちています。

本炉壇補修 中塗り状況
本炉壇補修 中塗り状況

まず、表面の仕上げ塗り部分を丁寧にはがしたうえ、中塗りの欠けた部分を中心に、取り寄せた「中塗り土」と「スサ」を混ぜたもので補修しました。中が狭いのでコテの小回りが効かず、結構苦戦してしまいました。・・・
これを充分乾燥させたうえでいよいよ仕上げ塗りです。

本炉壇の内壁は、京都の「稲荷山黄土」を塗るのが本式で最高級品だと聞いたことがあります。
しかし、茶道の先生より今回は「聚楽土」で塗って下さいといわれましたので材料を探していると、京都の壁土専門店が作っている「本聚楽土」のプレミックス品を見つけました。当初より材料の混ぜ合わせが慣れないと難しいのではとの危惧がありましたので、今回はこれの「黄土」を注文。これには「本聚楽土」に「みじん砂」「みじんスサ」「つのまた糊」が混合されているようです。いわゆる「黄土の糊捏ね仕上げ」というものです。

本炉壇仕上げ 本聚楽黄土
本炉壇仕上げ 本聚楽黄土

規定量の水を加えて練ると、夢中になって一気に塗りまわしました。・・・とても面白かったです。
稲荷山黄土ほどの美しい発色がないのですが、乾けばもう少し黄色くなるようです。

恐るおそる茶室へ納めに行くと、とても喜んでいただき一安心。
よい経験をさせていただきました。ありがとうございました。

茶室に納めた本炉壇
茶室に納めた本炉壇

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