- HOME
- Top
- アウトドアリビング・ベランダガーデン
- ベランダや屋上にもリビング感覚で癒しの庭づくり(その1)
ベランダや屋上にもリビング感覚で癒しの庭づくり(その1)
工夫次第で楽しめるベランダガーデン
あなたのベランダや屋上、上手に活かせてますか?楽しめてますか?
住宅の庭がインテリア化するなかで、ベランダや屋上の空間も「部屋」として捉えようという意識が強まっています。
インテリア感覚でテーブルやイスを置き、お気に入りの植物や景色を眺めながらお茶などを楽しみたいという人が増え、こういう暮らし方が徐々に一般的になってきたようです。外部空間を単なる付随的なスペースにせず、外の空間に「もうひとつの部屋」ができることで、生活に一層広がりや楽しみが増えることでしょう。
ただし、植物やテーブルなどをやみくもに配置してもなかなか簡単には魅力的な部屋(庭)にはなりません。特にベランダや屋上は狭いうえに数々の制約がありますので、安易に施工するとかえって不便な思いや余計なトラブルを抱え込みますので慎重な検討が必要です。
ここではベランダガーデンのプランニングにあたって、予め知っておくべきことをいくつかお話します。・・・
~ ベランダガーデン プランニングのポイント ~
1 まず、ベランダの現状を把握しよう。
プランニングにあたっては、まず現場を調査し把握するところからスタートします。
まず注意しなければならないのは、ベランダというのは「特殊な空間」だということです。下記のように様々な「制約」がありますので、それに則って「部屋(庭)」をつくります。特にマンションでは守らなければならないルールが多いので注意が必要です。
ベランダの基本的構造
1) 構造
ベランダの躯体構造としては「片持ち床構造」がほとんどです。構造的に弱いですから、物を設置する場合、外側に極端に集中させないようにしましょう。特に重量物には要注意です。
また、手すりは落下防止のためのものですので、手前に物を置く場合、足がかりにならないように注意します。法的には床面から高さ1.1m以上確保する必要があります。
2) 防水
防水仕様はさまざまですが、ベランダは一般的に簡易防水が多く、保護材を敷くなどの配慮が必要です。
また、防水が弱い場所での対応としては、床面が常に湿った状態にしないことが大切です。植栽する場合にもコンテナ植栽を基本とし、安易に土壌を直接入れてはいけません。
3) 排水
通常、余剰水は床の水勾配に沿って「排水溝」へ流れ、「ドレイン」に集まって階下へ落ちていきます。計画にあたっては、この「水みち」を塞がないことが大切で、ゴミトラップを設けたり、点検や掃除をしやすくしておきましょう。
4) 耐荷重
ベランダや屋上では載せられる重量が限られています。
どれだけ載せられるかは物件によって違いますので、その都度必ず確認をしましょう。法的には、最低限「床版荷重180kg/㎡以上、地震力荷重60kg/㎡以上」という建築設計上の積載荷重が定められていますので、基本的にはこの範囲内でつくることになります。
これは、一番荷重のかかる部分が、180kg/㎡を超えないということと、あわせてベランダ全体の平均が60kg/㎡を超えないということです。実際計画してみると平均60kg/㎡というのは非常に少なく、一般的なガーデンの素材では簡単にオーバーしてしまいます。計画した段階で平均荷重、部分荷重をチェックし、超える場合には「軽量化」を図ったり、重いものは部分使いにするなどして調整する必要があるでしょう。また、極端な「偏荷重」や「1点荷重」も避けましょう。
この「荷重」の問題と、防水や排水、給水など「水」の問題が、ベランダや屋上で何かをする場合の最もネックになる要素です。・・・
5) 利用可能なスペース
マンションのベランダの場合、各住人が専用で使っていますが法規上は共有スペースになっていますので注意が必要です。緊急時には共用の避難経路になっていることが多いので、この経路は塞がないことが重要です。
隣地との境になっている「避難用隔壁」の前には物は置かない。置いても手ですぐ押しのけられる程度のものとします。また、階下へ降りる「避難用ハッチ」がある場合にも、その上には物は置かないようにして下さい。
また、ベランダには「物干し」スペースがある場合が多いので、できれば、ガーデニングスペースと分けるか、無理なら修景に取り込んで、違和感のないデザインを考える必要があるでしょう。
さらには、エアコンの「室外機」もあります。温風の吹出し口を塞がないことと、植物は吹出し口の前には置かないようにしましょう。
ベランダは本来、ガーデンのために作られていませんから、本来の機能を損ねない配慮が必要です。
ベランダの自然環境や周辺環境
1) 日照条件
植物を育てるにあたっては、日照条件(日当たり)が最も重要な要素です。日照条件によって、使える植物やその管理基準が変わってきます。ベランダは床や壁に直射日光が当たり、その照り返しにより気温が上昇し、特に夏は高温や乾燥などで植物が傷みやすいですから注意が必要です
まず、方位(方角)を確認しましょう。方角によって日照条件が変わりますから、使える植物も変わってくることになります。そして、たとえ同じ方角でも現場によって状況が違ってきますので、よく「観察」することが大切です(朝夕の変化、季節変化など)。よくあるのが、たとえ南向きでも日照障害で日陰であったり、あるいは逆に北向きでも空が開けていると意外と明るいものです。
2) 風当り
適度な風は植物に必要ですが、強すぎる風は植物を痛めますし、また物が飛散したりなどの危険が生じます。一般的には上層階ほど強いといえますが、ビルの密集地では下層でも強い「ビル風」が発生し、複雑な動きをすることがあります。飛散防止対策や風除け、固定方法の検討等が必要です。
3) 周辺環境への配慮
都市部では、プライバシーの確保にも気を配る必要があります。特にマンションが立ち並んでいると外からの視線も気になりますので、ラティスや植物などで「目隠し」を考えます。
また、内から見て外に見える景色はどうでしょうか? もし隠したいものがあるなら 「目隠し」で隠し、背景として取り込みたいものがあるなら「借景」を考えます。
さらには、そのベランダは外からどう見えているでしょうか? 街の景観への配慮も必要で、街並みの統一感を極端に損ねないようにしましょう。
管理規約
マンションの場合、ベランダはあくまで共用部分であり、マンションによって様々な制約を設けています。事前に必ず「管理規約」は確かめておきましょう。これを怠ると出来上がってから取り壊しを求められるなど、余計なトラブルを抱え込むことにもなります。
制約の内容はマチマチですが、概ね共通することは、落下事故や緊急時に問題が生じないようにするなどの安全性への配慮が第一です。また排水詰まりや飛散防止など近隣(上下、左右)に迷惑をかけないことなどが求められています。
ベランダはガーデンのためだけには作られていない空間ですから、ベランダの本来の機能をトータルに考えて計画をしましょう。
このように、プランニングにあたっては、まず「現場の状況」をよく観察し、「ベランダの特殊性」というものを必ずよく把握、理解した上で進めるようにして下さい。
(つづく)