風変わりな葉っぱ・・・「こぶみかん」

タイ帰りの知人に風変わりなミカンのお土産をもらいました。

「こぶみかん」というそうで、名前は聞いたことがありましたが実物は初めてみました。
日本の柚(ユズ)に似ていますが、その名のとおり実の表皮が堅くゴツゴツしていて、「こぶ」というよりは大きなシワのようでもあります。・・・

「こぶみかん」は実よりも葉がよく利用され、タイ料理のトムヤムクンには欠かせない食材として有名なのだそうですが、近年は皮膚病の予防やガンの予防に効果があることがわかり注目を集めているようです。・・・

「こぶみかん」の実と併せて葉っぱも少しいただきました。
採取してから日が経っているようでいくらか変色しているようです。袋から取り出してテーブルにパラパラと広げてみると、・・・「???・・・」
妙な違和感があります。・・・葉の形が違うものが混ざっているようなのです。・・・
最初は種類の違うものが混ざったのかな・・・と思っていたところ、この2種類の葉がひとつに連なったものを発見・・・「なるほど!」・・・・
これが柑橘類によく見られる「翼葉(よくよう)」であることに気づくのに少し時間がかかってしまいました。・・・

それにしてもなんて大きな翼葉でしょうか!。
本葉と翼葉がほとんど同じ大きさです。
柑橘類には葉の付け根の葉柄(ようへい)部分に翼のような小葉がついているものが多く見受けられますが、日本のミカン類では小さなものやほとんど目立たないものが多く、比較的大きな柚(ユズ)でもこれほど大きな翼葉は見たことがありませんでした。

日本のミカン類やオレンジは翼葉が小さいかほとんど目立たないものも多い。
日本のミカン類やオレンジは翼葉が小さいかほとんど目立たないものも多い。
ユズの翼葉は個体差もあるが比較的大きい。
ユズの翼葉は個体差もあるが比較的大きい。

「葉」の形態には、大きく分けて葉身一つで一枚の葉を構成する「単葉(たんよう)」と小葉が複数集まって一枚の葉を構成する「複葉(ふくよう)」に分けられます。・・・
これらはさらに複雑に細分化された呼び名があるのですが、例えば複葉での主要なものには、トネリコなど羽根のようになった「羽状複葉」やトチノキなど手のひらのような「掌状複葉」、シロツメクサなどの「3出複葉」などがよく知られています。

ミカン類の葉は一応「単葉」のように見えますが、これを「単身複葉」として分類する場合があると聞いたことがあります。これは普通のミカンの葉を見ているとあまりピンとこなかったのですが、この「こぶみかん」の葉を見ると本来は複葉であったのではと少しだけ合点がいきました。

「こぶみかん」のように翼葉の大きな柑橘類は熱帯アジアに多くあるようです。これらはミカン類のなかでも原始的な種類とされているようですので、ミカン類は元々は複葉であったものが徐々に単葉へと進化してきたものと考えられます。・・・
しかし、植物全体でみればもともと「単葉」のものが徐々に葉に切れ込みが入っていってヤツデのような「分裂葉」になり、やがて「複葉」に進化していったと考えられておりますので、複葉になったものが逆にまた単葉に退化していったとも考えられそうです。・・・
葉は花などの生殖器官と違って環境によって大きく変化していきやすいのでこういうことも起こりうるのかなとも思いますが、また別の考え方もあるようでなかなか興味がつきないところです。・・・


ところで葉の変化といえば、以前近郊の山中でたまたま「コクサギ」の葉を採取したのですが、この木の葉序(葉のつき方)は少し変わっています。

コクサギ


一般的な「対生」や「互生」、「輪生」などと違って、葉が2枚ずつ互い違いに左右につきます。つまり、葉が「右、右、左、左、右、右、・・・」というように出るもので一般に「コクサギ型葉序」と呼ばれています。
進化の過程での中間型なのですが、対生と互生のどちらが先か、どういう過程を経て「葉序」が進化していったかというのは学者の間でもまだまだ諸説あるようです。・・・

思わぬお土産から思わぬ面白いものを見つけました。何気ない「葉っぱ」でも突き詰めていけば奥深いものですね。

つづきはまたの機会に・・・。


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