お茶庭からひろがる想い・・・(2)
怒涛のような数ヶ月が過ぎ去った・・・。
夢中になって仕事をしている時は目の前のことで一杯になり、あまり時間の流れ、月日の流れを意識する余裕がなくなるようですね。・・・ついこの間まで「寒い寒い」と嘆いていたのに、気が付けばいつの間にか春が通り過ぎていったような気がします。・・・
そんななか、以前ご紹介したお茶庭の仕事も2期工事に突入。・・・
現場に大きなソメイヨシノの大木があり、作業に入らせていただいた頃はようやく蕾が開き始めた頃でした。
ちょうど花見の頃でしたが、作業に集中していることもあり雪のように降りしきるサクラ吹雪の下でもほとんど観賞する余裕もありません。・・・
いつの間にかソメイヨシノは葉桜に変わり、続いて隣のサトザクラが満開・・・それも今はもう大方散ろうとしています・・・。
サクラの変化で過ぎ去った時間を知る・・・何か一抹の寂しさを感じるのは歳のせいでしょうか?・・・
お茶庭のつづき・・・
さて、オーナーの想いのこもった茶庭も中心部はほぼ完成に至りましたが、 エントランスまわりやその茶庭に至る長いアプローチがまだ未整備で、その修景に着手しました。
(隣の空き地も同時に少しづつ進行しておりますが、また追ってご紹介します。・・・)
まず課題となったのが、茶庭へのアプローチが建物本館(RC造の洋館)の横を通り抜けていく必要があり、 現状では外壁や窓等が直接目に入って茶庭への導入部としてはいかにも興ざめ・・・といえるような状況でした。・・・
すべてを目隠しで隠してしまうのはそもそも無理があります。・・・
またこれを塀や柵など構造物で処理するのではなく、樹木を活かした修景で目隠しや視線の絞り込みをしてみました。
(改修の前後)
動線と視点の移動を考慮しながら樹木を効果的にさりげなく配置することで、視線をうまく遮って絞り込み、客人を茶庭方向へ自然と誘導できるように配慮しました。(樹木はソヨゴやハクサンボク、シラカシ、カクレミノ、ナンテン、アオキなど常緑の雑木類を主体にしています。)
さらには、縁石や下草の植栽などディテールに配慮して視線を脚下に引き付けるようにしています。・・・
(なお、アプローチの舗装の改修は今回の茶会(オープンイベント)に間に合いませんので、次期工事に予定しています。・・・)
他にないような「野点」の場として・・・
また、当該敷地は生駒山麓にあり、南方向にまるで展望台のように台地状の舌状部が張り出しています。 この小広場からの展望が素晴らしく、大きなサクラの木の下で開放感に浸れる空間になっています。・・・
この台地状の三方向を見下ろすような特異な立地を活かして、ここを自然のなかでお茶を楽しめる「野点」の場として他にないような空間にしようということになりました。・・・
周りには他の住宅など目線を遮りたいものもありますので、低い生垣で広場を囲い込んで下方への視線を切り、高木と生垣で遠景へのフレームをつくっています。
芝生は次期工事以降にまわしましたが、野点ての場としての雰囲気づくりの土台ができてきました。
将来的には斜面に「茶畑」をつくり、茶摘みイベントも楽しめるような構想です。・・・
「在るもの」でつくる・・・
ところで、オーナーは物を大事にする方で「モッタイナイ」精神が強く、「できるだけ現場に在るものを再利用してくれ。」といいます。確かに敷地内には長年かけて収集してきた種々雑多なものがたくさんあるのですが、これの再利用は意外と難しいものです。・・・
特に今回は「石材」に苦心をしました。数量はそれなりにありますが、小さいものばかりが多くなかなか使いやすいものがありません。・・・
いろいろと苦心をしましたが、その分不思議と知恵や工夫もでるもので、制約があるほうがかえって面白いものができるのかも知れません・・・。
これこそガーデンリフォームの醍醐味でしょうか。大変楽しい経験をさせていただきました。(感謝)
・・・・・・・
仕事に一区切りが付き、地面に舞い散るサトザクラの花びらを踏みしめながら遠くに広がる大阪平野をじっと眺めていると少しづつ少しづつ気持ちが解れ、癒されてくるようです。・・・
そして、いつの間にか過ぎ去って記憶の底に沈んでいたはずの「時間」が、しっかりと充実感とともによみがえってきたような気がして一瞬不思議な感覚を覚えました。・・・