気品と情緒ただよう木 ヤマブキ
四季の樹木
ヤマブキ(山吹)
バラ科 ヤマブキ属 落葉低木 花期:4~5月
この植物はいわゆる「1属1種」でしかも日本と中国にしか分布しません。我が国では万葉の時代から秀逸な花木として評価が高く、日本人の生活に深く関わってきたようです。・・・
ですから、この植物にはどこかしら「日本的な情緒」と「気品」が強く感じられます。また、水辺に自生するためか「水」とのつながりも自然と連想してしまいます。・・・
先人はこの「ヤマブキ」を万葉集などの和歌をはじめ文学や民謡、芝居などで様々に取り上げてきたようですが、特に「隠語」や「ものの例え」として使われることも多かったようです。・・・
よく使われるのはその「色」の例えで、「山吹色」と言えば今でも小判(黄金)の代名詞です。
また、ヤマブキは「実がつかない」ものとされて、「実らぬ恋」に例えたり、あるいは有名な歌( ~ 七重八重 花は咲けども やまぶきの 実のひとつだに なきぞあやしき(かなしき) ~ )では、「実がない」と「蓑がない」をかけていたりします。・・・
このようにヤマブキは一般的に「実がつかないもの」とされてきたのですが、実がつかないのは「ヤエヤマブキ」という品種であって、基本種(花弁が5枚でひと重)にはちゃんと実がつきます。
ヤエヤマブキは雄しべ雌しべが退化して花弁に変化してしまい、花は咲いても実がつかなくなったもので、なぜかこちらの方が好まれて一般的になってしまったようです。・・・
でも、「気品」という点では基本種の方が優れているように私には感じられますがどうでしょうか。・・・
ところで、「ヤマブキ」は黄花が基本なのですが、淡い白花の「シロバナヤマブキ」という種があり、さらにはこれに似た「シロヤマブキ」という種もあってよく混同されます。
シロバナヤマブキはヤマブキの仲間ですが、シロヤマブキはヤマブキとは全く違う種類の植物です(これも1属1種、バラ科 シロヤマブキ属)。
一見よく似ていますが、純白の花弁は4枚で葉は対生(葉が対になってつくこと。ヤマブキは互生)ですので、よく見ればすぐに見分けられます。ときどきお庭や公園などで見かけることがありますので、よく観察してみて下さい。・・・
ただし、これらは近縁種のようにも見えますが、疑問視する人もいるようです。・・・
このように植物の世界では全く違う分類、系統に属する植物が一見似たような姿をしていることがよくあります。
(有名なのはカバノキ科の「サワシバ」とカエデ科の「チドリノキ」など・・・)。
詳しくはまたお話できればと思います。・・・