樹木を使って庭に広がりや深みをつくろう・・・様々な空間演出手法
樹木は空間演出の最強ツールです。
一般に庭づくりにおいては、人の「五感」に働きかけるような様々な空間演出を施すのですが、なかでも視覚的要素(見た印象)が重要で、その演出の良し悪しが庭の快適さ、居心地の良さに大きく関わってきます。
包まれたような空間で安心感やくつろぎ感をつくったり、また見晴らしのよい場所では開放感や活動意欲を高めたり・・・視線や動線をうまく誘導することで空間に強弱をつくり、実際以上に深みや広がりを感じさせます。
庭にはできるだけ「広がり」や「深み」を感じさせたいものです。
庭では古くからの手法として、目の「錯覚」を利用して、庭という空間をさまざまに演出してきました。
特に「樹木」という自然素材を用いることで、庭にさまざまな効果をつくりだせます。
樹木の特性を活かした空間演出
1 樹木で空間に広がりをつくろう。
草花など背丈の低いものだけでは立体感に乏しく単調になりがちで、また実際の広さ以上には広く感じにくいものです。・・・
背丈の高い樹木を用いることで空間の骨格を形成できますし、上下左右に枝葉が広がるので「広がり」を感じます。
特に、人の背丈より高くて枝葉が四方に広がる「落葉広葉樹」を中心に庭を構成すると効果的でしょう。
2 樹木で包まれている安心感を表現しよう。
空間を構造物だけで「囲う」と圧迫感や威圧感がでやすいものです。
樹木を上手に使ってやわらかく囲うことで、圧迫感も少なく、独特の落ち着ける空間になります。手軽に安心感、くつろぎ感を演出できます。
3 遠近法を利用して奥行き感を強調しよう。
目の錯覚を利用して遠近感を狂わせ、庭をより広く「奥行き感」のある空間にみせるには、伝統的にさまざまな手法があります。
一般的には物の大小、先細り、曲線、蛇行、明暗、高低差などで遠近感を意図的に狂わせることができます。
これに植栽テクニックをうまく使うことで、さらに造園独特の複雑な奥行き感を表現できます。
例えば、近景に背の高い樹木や葉の大きな樹木を配し、奥へ行くほど低く小さな樹木にすることで遠近感を強調できます。また、明るい色は近くに迫って見え、暗い色は遠く離れて見えますので、これを花や葉の色を使って意図的に表現できるでしょう。
4 空間を区切ることで広くみせよう。
狭い庭でもあえて「区切る」ことで広く感じることができます。
ただし、向こう側の景色を全く遮断してしまうのではなく、向こう側の空間も見えるようにしましょう。
樹木越しにチラチラと奥の空間が見え隠れすると、深みが増し非常に効果的です。これは造園ならではの空間演出といえます。
5 隠すことで奥行き感を強調しよう。
人は遮蔽物があると、その先に何かがあるのではと期待感を持つようです。
その先の空間を意識することで、結果として奥行きを感じます。アプローチなどの通路は曲げて手前に樹木を配置するとよいでしょう。奥を隠すことにより、実際よりもその先を奥行きあるものに意識できます。
また、樹木で目線を切ったり、視界にフレームをつくることでうまく視線を誘導できます。見せたい部分を強調することで空間を引き締めます。
6 目隠しでプライバシーを守ろう。
外部に開放された庭で居心地よく過ごすには、「目隠し」は重要な要素です。
樹木を上手に使うことで、窮屈な感じもなくうまくプライバシ-が守れます。生垣など目的にあった目隠しで、のびのびとリラックスできる庭を演出しましょう。
生垣は、通常、境界部分で人の視線を遮るには人の視線の高さがあれば充分でしょう(1.5-1.8m)。高すぎると圧迫感や日照を遮りますので注意が必要です。
また、隣家の窓やトイレの窓、勝手口など部分的に目隠しをしたい場合には単独木による目隠しがおすすめです。
スペースがないときにはフェンス等にツル植物を絡ませてみましょう。