木を植えてみよう・・・失敗しないコツは木の生理機能を知ることから

木を植えよう

木を植えてみよう!

庭園プランナー・樹木医の塚本です。

 

「庭に自分で木を植えたいんだけど、どうすればいいのかな?」

「木を植えるって、初心者にはちょっとムリかなぁ」・・・

興味はあっても今までやったことがなければ、やっぱり不安になりますよね。

 

でも、もし自分で自在に木を植えられるようになったら、庭づくりや庭いじりの楽しみがもっともっと増えていきそうですよね。・・・

「そう思うと、何だかちょっと面白そう・・・」

そう、あなたのその直感はきっと当たっていると思いますよ。

木を植えるって意外と楽しいことなんです。そしてまた、意外と簡単だったりします。

もちろん、技術的に難しいところや豊富な知識・経験を必要とする局面もありますし、実際奥の深い世界でもあるでしょう。

かといって、いつまでも尻込みしていても始まりません。とにかくまず実践してみることをおすすめします。

 

ここでは、木を植える手順や考え方を、初心者の方でも実践できるように分かりやすくお伝えしたいと思います。

大事なポイントは、樹木はあくまで「生き物」だと意識して、その「生理機能」を踏まえておくことが失敗しないコツかと思います。

あまり難しく考えないで・・・失敗を恐れずに・・・ 是非、思い切ってご自分で木を植えてみて下さい!

実際にやってみることで、思いもかけない発見や自分なりに見えてくるものがきっとありますよ。

以下、木を植える手順をお伝えします。
ただ、実際の植栽作業では、木の大きさや植え付ける場所の状況等によって準備する機材等も変わってくるかと思います。
ここでは、雑木の小高木(人の背丈より少し大きい樹木)を想定し、すべて人力作業として話を進めます。

また、本稿で取り上げている手法はあくまで関西地方の気候や土壌(真砂土)を基準としております。地域が異なれば気候や土壌の違いからそのまま当てはまらないこともあります。

    目   次

1 まず、植え付けの準備をしよう。

   失敗しないためのポイント 1
   枝葉を剪定しよう。
   失敗しないためのポイント 2

2 植穴を掘りましょう!

   失敗しないためのポイント 3

3 木を立て込んでみましょう。

4 土を埋め戻しましょう。

   失敗しないためのポイント 4

5 水鉢を盛りましょう。

6 支柱を取り付けましょう。

7 まとめ

1 まず、植え付けの準備をしよう。

植えつけ場所に持ち込まれた樹木は、そのまま植えてしまうこともあります。
でも、一般的にはまず「剪定」や「幹巻き」などの植え付けの準備作業をしてから植え付けます。

作業の目的はあくまで樹木を弱らせないため、活着しやすくするためです。

搬入された樹木

■失敗しないためのポイント 1

まず、植える時期をよく見極めましょう・・・
(一般的な目安)
※落葉広葉樹  秋に落葉してから、翌春に新芽が伸び始める前までの期間。できれば、早春から萌芽前までの期間(3月ごろ)がベストでしょう。梅雨ごろは樹木のエネルギーが不足しているのであまり向きません。

※常緑広葉樹  新芽の出る前の春か、新芽が固まった梅雨ごろ、あるいは秋がよいでしょう。

まず、樹木の性質にあわせて無理なく植えつけるのが、失敗しないための基本といえます。
でも、状況によっては必ずしも適期に植えられないこともあるのですが、慣れないうちは無理せず適期を選んで植栽しましょう。

枝葉を剪定しよう。

この場合の剪定は、あくまで樹木を無事に活着させることが主な目的になります。
しかし、雑木らしい趣きを崩しては意味がないので、下記の基本は守るようにして下さい。

雑木の自然風の剪定は、まず枝を「間引く」ことが基本ですのでくれぐれも刈り込まないようにしましょう。

(下図に木のボリュウムを抑えながら枝を間引いていく方法をごく簡単に示しています。)

 

※ まず、枝の分かれ目(又部)で切ること、枝の途中でブツ切りしないことが大原則です。これだけは忘れないでください。

※ 細い枝であれば少々切るところを間違えてもまた枝が伸びてきます。
ただし、太い枝(特に幹から出ている太枝)だけは、腐朽の原因となる危険があるので注意を払って下さい。(参照:「枝を切るのは慎重に」)

※ むずかしいのはどれくらい剪定するか、でしょうか。

これは樹種や木の状態、植え付け時期によっても異なります。後述しますが、切り過ぎや切り足らずにならないようバランスが求められます。

落葉している時期はそれほど問題はないと思います。
でも、葉の付いている時期(樹種)は、葉から水分が盛んに蒸散して出ていきますので、葉が萎れかかっていないかなどよく観察する必要があります。
こういった意味でも、少しでも枯れるリスクを下げるために適した時期に植えるようにしましょう。

 

■失敗しないためのポイント 2

実は「木の移植」って、樹木にとってはとても危ない行為なのです。

樹木にとって「水」は必要不可欠です。でも、掘り上げられた樹木は根を切られていますので、水を充分に吸い上げられない状態になります。
一方、根の状態にかかわりなく、枝葉からはどんどん水分が出て行きます(蒸散)
これは、樹木にとってはまさに「生死にかかわる危ない状態」であるということをまず認識しておいて下さい。一刻も早く植えてあげましょう!

 

また、根を切って吸水力が下がった分、そのバランスをとるために一般的には枝葉の「剪定」をして枯れるのを防ぎます。
でも、樹木はエネルギーを葉で作ります(光合成)ので、枝葉を切り過ぎてしまうと根も伸びず、逆に木を弱らせてしまいます。くれぐれも切り過ぎには注意しましょう!

樹木はあくまで「生き物」ですから、このように「樹木の生理機能」を念頭に置くことが、失敗しないための大きなポイントといえます。
木を枯らさないために様々な手法があります。少しずつ学んでいきましょう。

2 植穴を掘りましょう!

植える位置を確認したら、スコップで「植穴」を掘ります。

植穴の大きさは「根鉢」の大きさを基準にします。直径は根鉢の1.5倍以上、深さは根鉢の高さよりやや深め。
要するに、植穴と根鉢の間でスコップが自由に操作できる程度の余裕を持った大きさに掘れればよいでしょう・・・
また、植穴の底は柔らかくほぐしておきましょう。

※ ここでは事前に「土づくり」をしている想定です。そうでない場合、掘り上げた土にバーク堆肥などの「土壌改良材」を混ぜて埋め戻し土とします。

■失敗しないためのポイント 3

樹木に適した土ってどんな土??

あなたは、「肥料」さえやれば樹木は元気になると単純に考えていませんか?
もちろん、土の中に養分(肥料分)は必要なのですが、もっと大事なものがあります。
・・・それは空気(酸素)と水です。

よい土の最も基本的な条件は「空気」や「水」が適正に確保されていることなのです。

これを、「物理性がよい(水はけ、通気性、水もちがよい)土」といい、 次に「化学性がよい(よく肥えている)」ことが必要なのです。
(水はけが悪いと「根腐れ」をおこしますし、通気性が悪いと根が「酸欠」をおこしますし、水もちが悪いとすぐに「乾燥」してしまいます。)

物理性のよい土のなかでも、「団粒構造」の土が最も理想といわれます。

イメージ的には、ちょうど畑や森林の表土のように、黒っぽくてフカフカした空気と有機物がいっぱい入った土です。
この土は、自然の生態系の中では、落ち葉とミミズなどの小動物そして微生物などが関係して自然の連鎖の中で徐々につくられていく土です。

しかし、人工的な庭においてはいきなりそんな土はできません・・・。
ですから最初の段階である程度その下地を作ってあげる必要があるのです。(それを「土壌改良」といいます。)
実際には、堆肥や腐葉土などのよく熟した有機物を土と混ぜ合わせます。さらにはパーライトなどを加えて植栽用土とすることが多いです。

 

なお、特に注意が必要なのは、その場所自体の水はけ(排水性)の良し悪しです。

雨の後にいつまでも水溜りが残るようなところは注意して下さい。
下の層に粘土層があると、いくら表面をよい土に改良しても、その場所自体の水はけが悪くて「根腐れ」をおこしてしまいます。 この場合は、「高植え」(後述)である程度対処もできますが、根本的には、土の中に透水管を設けて敷地外へ排水し、水が溜まらないようにするほうがよいでしょう。

3 木を立て込んでみましょう。

次に、掘った植穴に樹木を入れて立て込む作業です。

まず、植穴の底に「床土」を中高に盛り、その上に樹木をそっと置きます。
樹木を持ち上げる際には、枝が折れたり根鉢が割れたりしないように慎重に取り扱って下さい。

立て込んだとき最も大事なことは、根鉢の埋まり具合(高さ)です。
植え付けの大原則は「深植え」にしないということです。(特殊な事情がない限りこれは守って下さい。)

樹木は「床土」の上で傾きや向きを微調整できます。
「これでよい。」と思える形になったら、少し土を植穴に戻して樹木が自立するようにします。

4 土を埋め戻しましょう。

立て込みが終わりしだい、土を植穴に戻していきます。

この際、ホースで水を注ぎながら突き棒で突き、根鉢と土に隙間ができないようにしてよくなじませます。
そして、少しずつ土を戻しながらこれを繰り返していって植穴全体を埋め戻していきます。
水が引くのを待って、残りの土を戻して静かにそっと踏み固めておきます。

■失敗しないためのポイント 4

乾燥した土には、水を表面からかけるだけでは水みち(通り道)ができてしまって均一に土が濡れません。
必ず棒で突いて全体に水が行き渡るようにして下さい。
(ここでは関西地方の土壌(真砂土)を想定しています。)

5 水鉢を盛りましょう。

埋め戻しが終わると植穴の周囲に「水鉢」をつくります。

水鉢とは水やりをする際に水を外にこぼさないようにするためのものです。
一般的には埋め戻しの残り土を使って根元の周りに環状に土盛りをつくります。スコップや手で軽く叩くなどして、水を注いだとき崩れないようなものとして下さい。

水鉢ができたら、水鉢を崩さないようにそっと水を注ぎましょう。 (水が引くのを待って、数回やります)

6 支柱を取り付けましょう。

次に、「支柱」を立てておきます。

支柱の目的は、木が倒れないよう、あるいは風などで木が大きく揺れて新たな根の生育に障害とならないようにするためです。

支柱には目的や樹木の大きさ、植え方等に応じてさまざまな手法があります。
個人庭園では大きな樹木なら3本支柱(八ツ掛支柱)や鳥居型支柱、背丈ほどの小さな樹木なら1本支柱(脇差し)でよいでしょう。

支柱のポイントは、「きつく固定し過ぎない」、また「根が張ったころに取り外す」ということでしょう。

樹木の根は養水分を吸収するだけではなく、樹木の体を支えるために発達します。また、幹も養水分の通り道となるだけでなく、樹冠を支えるために発達します。
しかし、幹が支柱によって長い間きつく固定されてしまうと、根は幹を支える必要が無いので発達しにくく、また幹も固定したところより下部は太りにくい(弱くなる)のです。

もちろん、あまりに緩すぎてはだめですが、木を甘やかさない程度に少しゆるめに固定しておきましょう。

7 まとめ

初心者の方にもわかりやすく伝えられたでしょうか?

どうしても、植栽の大前提となる樹木や土壌の性質等知ってほしい部分がありましたので、人によっては若干むずかしく感じられたかもしれませんね。

でも、実際にやってみることで、しっかりご理解いただける内容かと思います。

 

失敗しないコツは、やはり木の生理機能を踏まえることが基本といえます。

根を切って掘り起こされた樹木は危ない状態にあるのだと認識して、一刻も早く植え付けてあげて下さい。

特に、葉の付いている時期(樹種)の植栽は、葉の様子をよく観察する必要があります。

ひとつの目安として、植えて根が落ち着くと、樹木は新芽、新葉を残しながら、不要な葉(緑の古葉)を自分で落としていきます。この場合はとりあえずうまくいったと判断できます。
逆に、葉が落ちず、枝についたまま萎れてくるのは危険信号といえます。・・・

・・・

剪定など慣れないとむずかしい作業もあるかもしれませんが、
「適した時期にすばやく丁寧に植え付ける。」を基本にすれば大きな問題はないと思います。

また、近年、根を切らずに移植できるように、「ポット物」として育成された造園木も作られるようになってきています。
大きな木は少ないですが、このような樹木を利用することで、失敗するリスクはさらに軽減できるかと思います。

・・・

まずはチャレンジしてみて下さい。

実際にご自分で木を植えてみることで、新たな興味や疑問が次々と湧き上がってくると思います。

そして何より夢中になっている自分に気づかれるかもしれません・・・

庭づくりの楽しみがさらに広がることを期待しております!

 


(木を植える、木の植え方)

 

関連記事一覧