明るい日陰(半日陰)の庭づくり・・・使える植物は多くあります!

日陰だから・・・と諦めないで。

まず日陰の特性を知りましょう。

小さな庭、狭い庭は一般的に建物や壁に囲まれた空間が多く、そこはどうしても日照条件が悪くなりやすいものです。

植物が日光を必要とする生き物である以上、庭づくりにおいて「日陰」はもっぱらネガティブに捉えられがちです。しかし、一口に「日陰」といっても実際にはその立地によって明るさ等は千差万別です。・・・

日陰の庭

同じ場所でも日中の太陽の動きによって日陰の位置や状況は変化しますし、季節によっても大きく変わります。またその日差しを遮るものが樹木なのか、構造物なのかによっても明るさやその場の印象が大きく変わってしまいます。 まずその場の日陰の特性を知ることが大切です。時間によってあるいは季節によってどのように日陰が変化するのかをよく観察してみましょう。

 

ここでは大きく分けて二つのタイプの日陰をご紹介します。

日陰のタイプを理解すればその場に応じた素敵な庭をつくれる第一歩を踏み出せます。 タイプに応じて日陰に向く植物は多くありますし、中には日陰の方が健全に育つものもあります。使える植物さえあれば、その場に応じた潤いのある庭は作れます。 またその植物の特性や生態を理解すれば日陰での植物管理も決して難しくはありません。日なたに比べて日陰の植物は生長も遅くなりますし雑草も生えにくいのでかえって管理も楽になります。 日陰向きの植物には繊細な葉色のものや香りの強いものが多いなど日なたの植物とは違った魅力も多くあります。・・・

日陰の庭
日陰の庭

「日陰」をネガティブばかりに捉えるのではなく、日陰を味方にするコツを知りましょう。 ここでは、半日陰(明るい日陰)のタイプと暗い日陰タイプ(別稿にて)に分けてお話しします。 ・・・是非あなたならではの「シェード・ガーデン」をつくってみて下さい!


 

日陰の庭

明るい日陰(半日陰)タイプの庭づくり

いわゆる園芸本などに出ている「半日陰」と言われるタイプです。 厳密にはその定義はさまざまあるようですが、大まかなイメージとしては落葉樹の下やあるいは建物や塀に遮られてはいるものの半日程度は陽光が差すような比較的明るい場所を指します。

落葉樹の下など

一般的に落葉樹は葉が薄く、木の下にはやわらかな木漏れ日が差して明るい日陰をつくります。

ここに適応できる植物はたくさんあります。特に夏の強い日差しを嫌う下草類(グラウンドカバー)には最適ですし、また冬には葉が落ちますので冬のやわらかい日差しが根元にも届きます。・・・ 厳密には樹木の高さや樹形等によってできる日陰の状況も変わるのですが、明るめの空間なら多くの草花がちゃんと生育してくれます。 インパチェンスなどの半日陰でも平気な一年草の草花で華やかさを演出したり、また、多年草類(宿根草類)なら半日陰が好きなギボウシやフッキソウなどが適していると思います。

日陰の庭

多年草類を混植する場合のポイントは、「花」ばかりで選ばずに「葉」の色や形、草姿を重視して選ぶことです。もちろん多年草類も四季折々にきれいな花を咲かせるのですが、年間において花が咲く時期はごくわずかでほとんどは葉の姿を眺めことになるからです。 これらのグラウンドカバーには形や色合い、質感にそれぞれ多彩な個性があります。細い葉や丸い葉、大きい葉、緑の濃淡や斑入り葉、黄葉や紅葉、青葉、ツルツル、フワフワ、シットリ・・・これら多彩な植物をうまく組み合わせることで、陰になった空間に彩りや深み、変化をつくり、日なたとはまた違った日陰ならではの心地よい風景を表現できるでしょう。

日陰の庭
日陰の庭
建物や塀の陰など

また、建物など構造物で遮られた日陰は明と暗がはっきりしやすい日陰です。

日陰の庭

東や西側は半日だけ日が差しますし、北側でも上空や前方が開けている(天空率が高い)ところは夏には部分的に直射日光があたることもあり、反射する間接光もあって比較的明るいので多くの植物が適応できそうです。場所ごとに明暗をよく見極めて植物を選びましょう。

また、たとえ明るい芝庭であっても、庭には必ずといっていいほど芝生が育たない場所があるものです。そんなに暗くないところなら、枯れた芝生を蘇らせることに苦心するよりも、発想を変えて日陰の花壇にしてみましょう。芝生が育たないような建物の陰でも、葉色や花を活かして目を見張るような鮮やかな修景ができるでしょう

芝、半日陰、花壇

また、半日程度日光が当るような日陰なら、陽光を好む植物(いわゆる「陽樹」)でも充分適応できるものもありそうです。ただし、直射日光の当たりにくい場所では陽樹は光を求めて徒長したり、ひ弱に育ったりと問題が生じやすいので注意も必要です。

日陰の状態は千差万別です。しっかり分析して環境にあった植物を選びましょう。


 

  明るい日陰に適した植物たち

 
 

マホニアコンフーサ メギ科 常緑灌木 花期12~1月頃 ヒイラギナンテンの仲間。花の少ない時期に黄色い花を咲かせます。葉が細長くしだれて、やわらかな印象を与えてくれます。耐陰性が強くまた陽地にも使えますので、非常に使い勝手の良い灌木です。大株になると1本でも見ごたえがあり、狭い空間では主木としても引き立ちます。

フイリマサキ
 
 

フイリマサキ ニシキギ科 常緑中木 陽樹ですが陰地でも育ちます。もっぱら生垣によく用いられることが多いですが単植でも使えます。カラーリーフとして斑入り葉や黄葉など多くの品種があり、庭のイメージに合わせて使い分けるとよいでしょう。

ハイノキ
 

ハイノキ ハイノキ科 常緑中木  (参照:おすすめ樹木ギャラリー・常緑樹)

ハクサンボク
 

ハクサンボク スイカズラ科 常緑中木  (参照:おすすめ樹木ギャラリー・常緑樹)

フイリグミ
 
 

フイリグミ・ギルドエッジ グミ科 常緑灌木~中木 陽樹ですが明るい日陰でも使えます。葉色が際立って明るく目立つので庭のアクセントとして重宝します。強健種。枝葉も乱れやすいので剪定管理が必要です。

 
 

ジンチョウゲ ジンチョウゲ科 常緑灌木 古くから用いられ使い古された感はありますが、斑入り種もあり、花や香りも楽しめる日陰の庭の定番です。よく茂りますが、丸く刈り込むよりも枝を透かしてやるほうが周りと調和します。定着すれば強健ですが、根が粗いので移植後の管理は慎重に。

 
 

セイヨウイワナンテン ツツジ科 常緑灌木 北米原産。葉の鑑賞価値が非常に高く、半日陰のカラーリーフの定番です。枝はしだれる性質があり、花穂には鐘状の白い小花が密生します。「レインボー」や「トリカラー」、「アキシラリス」などの葉変わり品種があって使い分けるとよいでしょう。乾燥には強くないので管理に要注意。

ギボウシ
ギボウシ
ギボウシ

ギボウシ類 ユリ科 落葉性多年草 花期5~9月頃 日本原産の多年草。欧米で盛んに品種改良されて多彩な品種があります。日陰のカラーリーフの定番で愛好者も多く、ギボウシを植えたいがために庭に落葉樹を植えて日陰をつくるガーデナーもいます。存在感のある大きな葉が庭の中で目を引きますが、冬季は地上部が枯れます。

 
 

ミスキャンタス ユリ科 常緑性多年草 ヤブランに似るがジャノヒゲ属の植物で、白い花を咲かせます。丈夫で葉が明るく使い勝手もよいカラーリーフで大変重宝します。近縁の「ジャノヒゲ属」や「ヤブラン属」には似たような斑入り種が多く、混同されたまま流通しているようです。

ヒマラヤユキノシタ
 
 

ヒマラヤユキノシタ ユキノシタ科 常緑性多年草 花期3月頃。陽地を好みますが明るい日陰にも使えます。春に立ち上がるピンクの花穂と特徴のある大きな葉は庭のアクセントになります。

キチジョウソウ
 
 

キチジョウソウ ユリ科 常緑性多年草 漢名:吉祥草 花はあまり目立ちませんが、明るい葉色や草姿が日陰の庭を明るく演出してくれます。日なたでは葉焼けをおこすこともあります。地上を這うように徐々に広がります。

ヒューケラ
 
 

ヒューケラ ユキノシタ科 常緑性多年草、花期5~6月頃 和名:ツボサンゴ 葉変わり品種が多い。葉の間から花茎を立て鐘状の花をつけます。明るめの空間が適地でしょう。

 
 

フッキソウ ツゲ科 常緑性 漢名:富貴草 日本原産で世界に誇れるグランドカバープランツの定番です。小さな白花もつけますが、もっぱら明るい緑葉を観賞します。個々の株も魅力的ですが、地下茎でゆっくり広がりますので、樹陰下でマット状にひろがると本種の良さがさらに際立ちます。草丈はさほど大きくなりませんが、刈り込んである程度低く抑えることもできます。

アスチルベ
アスチルベ
アスチルベ

アスチルベ ユキノシタ科 落葉性多年草 梅雨前後にかけて風情のある花を咲かせます。花期は短いものの大型になったものは多くの花穂をつけて美しい。花つきは日なたの方がよいですが半日陰でも元気に育ちます。肥沃でやや湿った土を好み、強く乾燥するような場所には向きません。花色違いをグラデーションにしてある程度まとめて植えたほうが本種の魅力が際立つでしょう。


(小さな庭づくり、大阪)


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