暗い日陰での庭づくり・・・植物以外にも工夫しよう!
暗い日陰タイプの庭づくり
直射日光のほとんど差さないような暗い日陰のタイプです。 大まかなイメージとしては葉の生い茂る常緑樹の下や建物などに囲まれた狭い場所などです。
ただし、暗い日陰といっても間接光が比較的明るく差し込む程度や真夏にはわずかに日が差し込む程度の明るさは必要です。 植物が光合成できる最小限の光量(光補償点)は人が暗いと感じる程度よりもかなり明るめの空間です。人が暗いと感じてしまうほどの空間では健全に育つ植物はほとんどありません。
このように植物を育てにくい暗い日陰ですが、これをすべてネガティブに捉える必要はありません。・・・
日陰には日陰ならではの良さがあります。
日陰はモノの輪郭線を和らげ、おぼろげで神秘的な雰囲気をつくります。落ち着いた暗い日陰にはベンチをひとつ置くだけで静かでさわやかな憩いの場を提供してくれます。 また、限られたグリーンでもその中にお気に入りのアイテムを置けば、日陰のさわやかなムードをさらに引き立ててくれます。・・・ 日陰の良さを活かして日陰を味方につけることで、あなたなりのいろいろなアイデアやオプションが見えてくると思います。・・・
まず、じっくりと日陰の状態を観察してみましょう。
そして日陰の空間を、作りたい庭のスタイルやデザインに近づける方法を見つけましょう。場所による明暗の違いを見極めながら、自由な発想で、取り入れたい要素をその空間に当てはめてみます。・・・ もしもっと明るさが必要なら、場合によっては陰を作っている樹木の枝を剪定したり、壁など構造物を改造することで改善することもあるかもしれません。 試行錯誤もまた庭づくりの楽しい過程です。・・・
使えそうな植物は限られますが・・・
このような暗いタイプの日陰でもできるだけ植物を取り入れたいものですが、ここでは耐陰性の植物(いわゆる「陰樹」等)の利用が基本になってきます。
耐陰性の植物もさまざまな種類がありますが、基本種は濃い緑の葉色が多く、それだけではどうしても陰気な印象になりがちです。しかも、残念ながら暗くなればなるほど花つきが悪くなり、花の彩りは取り入れにくくなります。・・・
でも、諦める必要はありません。グラウンドカバーや葉ものにはさまざまな色合いや形状、質感の個性豊かなものが多くあり、花がなくても別に単調になることはありません。
緑の葉色をベースにしながらも、引き立てたいポイントを中心に斑入りなどの明るい「カラーリーフ」を組み合わせてみましょう。それだけで日陰の雰囲気が大きく変わります。
植物以外にも配慮しましょう。
また、植物だけでなく、周りの構造物や取り入れるアイテムも工夫することで、庭を少しでも明るく演出することが大切です。
例えば、壁面の色は暗色ではなく白色等の明るい色にするだけでも印象が大きく変わります。 日陰では暗く感じる濃緑の葉色でも、明るい壁面とのコントラストでかえって緑が引き立って見えるでしょう。 さらには床面の舗装等にも配慮しましょう。敷き砂利の色を明色にするだけでずいぶん雰囲気が変わるものです。・・・
また、庭に置くアイテムにも配慮しましょう。 例えばオブジェなどは明るい色のものをフォーカルポイントに据えて、視線を誘導して空間にメリハリをつけるようにします。空間が引き締まって見え、暗くて狭い空間が結果的に明るさや広がりを感じる庭になるでしょう。また、この場合できるだけ植物を添えましょう。陰になったスポットに彫刻などを置くととたんに周りのグリーンが生き生きと際立ってきます。 また、オブジェ以外にもテーブルやベンチ、照明などさまざまに検討してみましょう。アイテムの選択だけでなく、配置や見え方を工夫するだけで空間に変化や奥行き、広がりが生まれ、ひいては暗さを感じない魅力的な庭になります。・・・
また、(別稿にて)後述しますが、「コンテナ植栽」も日陰の庭では大変有効な手法です。 うす暗い片隅でも華やかなコンテナ植栽を置くだけであたりがいっぺんに明るくなるものです。簡単に動かせるのが鉢植えの大きな利点ですので、植え替えや入れ替えを前提に鉢や植える植物、配置等をいろいろと検討してみましょう。
日陰をネガティブに捉えるのではなく、まずよく観察してみましょう。日陰の良さを活かして日陰を味方につけることで、あなたなりのさまざまなアイデアがきっと見えてくるかと思います。・・・
暗い日陰でも使える植物たち
フイリアオキ ミズキ科 常緑中木 日本原産ですが、欧米で盛んに品種改良されたものが逆輸入されており、葉色の違う多くの品種があります。日陰に強く、乾燥する日なたではかえって葉焼けをおこすことも多いです。日陰の庭を明るく演出してくれる数少ない樹木のひとつです。
フイリヤツデ ウコギ科 常緑中木 和庭で見慣れた樹木ですが、陰地では重宝する数少ない樹木です。斑入り種は葉色も明るく、洋風にも使えます。大きな葉を活かすように周りの配植を考えたい。
フイリサカキ ツバキ科 常緑中木 (参照:おすすめ樹木ギャラリー・常緑樹)
カクレミノ ウコギ科 常緑中木 (参照:おすすめ樹木ギャラリー・常緑樹)
フイリヒイラギ モチノキ科 常緑樹 品種は多い。明るい葉色を活かして日陰の生垣に使えるが、単木で植えてもよい。
カンツバキ ツバキ科 常緑灌木 強健で緑化用花木の定番ではありますが、陰地でも使えるので重宝します。斑入り種もあります。
フイリヤブラン ユリ科 常緑性多年草 花期9月頃 緑化用植物の定番で、高架下などの悪条件の場所でもよく用いられる強健種です。薄紫の小さな花を穂状につけ、冬季には地上部がへたれます。緑葉の基本種のほうが陰地にはよく耐えるようです。
フイリツワブキ キク科 常緑性多年草 花期10~11月頃 極めて強健な日陰の定番植物。花の少ない時期なので重宝します。和のイメージが強いですが、明るい斑入りのものであれば使い方しだいで洋風にも合うでしょう。
フイリシャガ アヤメ科 常緑性多年草 花期3~4月頃 光沢のある葉の雰囲気が明るい。日陰に強く、花も美しい。地下茎で広がって茂っていくので混植すると他の植物を被圧することもあります。
ヘデラ類(アイビー) ウコギ科 ツル性常緑樹 陽地でも陰地でも良く育つ強健種。他のものが植えられないような悪条件の場所には大変重宝します。斑入りなど多くの品種があり、また品種によって登はん力の強いものや這性のものなど性質も異なります。
(小さな庭づくり、大阪)