木を診断してみよう・・・樹木の診断カルテ

木を診断してみよう。

樹木は体全体を使ってさまざまなことを訴えてきます。
樹木をよく観察すると、どの部分が弱いのか、どの部分が病気や害虫にかかっているのか、さらには何が原因なのかが徐々に分かるようになってきます。
ここでは、誰でも樹木の健康状態を診断できるように、「診断カルテ」をご紹介します。
できるだけわかり易いように、判断しやすいように簡易にまとめたものですので、気軽に木のお医者さんになって診断をしてみましょう!

診断項目ごとに1~4点で採点し、その合計点で健全度を概ね把握できるようになっています。

1 地上部の様子を診断しよう!

1)木を見たときの第一印象はどうですか?

樹勢を初見の印象で判断します。慣れてくると、枝葉のボリュウムや立ち姿で大まかな判断ができるようになります。

1)木を見たときの第一印象はどうですか?(樹勢)
旺盛な生育状態。弱っているような印象は全くない。4
幾分元気がなさそうにも見えるが、あまり目立たない。3
異常が明らかに認められる。2
生育状態がきわめて悪いようだ。または、ほとんど枯死している。1

2)全体の枝のバランスは良いですか?

木は本来、日照を効率よく受けるために枝を四方にバランスよく広げようとします。バランスよくついた枝葉はエネルギーを体全体に充分にとどけることができます。片枝や、上枝がないというのは何らかの不具合を示しています。・・・

2)全体の枝のバランスは良いですか?(樹形)
全体にとてもバランスがよい。(自然樹形を保っている)4
枝がやや偏って付いている。(若干の乱れ)3
枝がだいぶん偏って付いている。(かなり崩壊)2
ごく一部にしか枝がない。(ほぼ完全に崩壊)1

3)木全体に小枝や葉がたくさんありますか?

木は葉で光合成してエネルギーを生産していますので、枝葉の多さは元気のバロメータでもあります。

3)木全体に小枝や葉がたくさんありますか?
小枝や葉がたくさんある。4
小枝や葉がまあまあよく出ている。3
小枝や葉が少ない。2
ほとんど枝葉がない。1

4)枯れた枝はないですか?

葉のなくなった枝は役目を終えて枯れていきます。ただ、枯れる位置によって意味合いが大きく異なります。下枝の枯れは上枝に被圧されて自然と枯れ落ちていくことが多く、多くの場合特に問題はありません。しかし、上の方の枝が枯れている場合は根の力が弱っていることが多く、水が満足に上まであがっていないことを意味します。根が弱る要因はさまざまですが、この症状は重要な指標となります。・・・

4)枯れた枝はないですか?
枯れた枝はない。4
下の方に少しある。3
上の方にもある。2
枯れた枝がたくさんある。1

5)切られた痕(あと)がありますか?

枝を切られるということは木にとって大変大きなダメージになります。特に太い枝はついている枝葉も多いのでたくさんのエネルギー源や貯えを失うことになるのです。しかも大きな傷口が残ります。これも重要な健全度指標でしょう。・・・

5)切られた痕(あと)がありますか?
切られた痕はない。4
切られた痕が少しある。3
切られた痕が目立つ。2
切られた痕がたくさんあり、繰り返し何度も切られている。1

6)木の肌はどんな感じですか?(樹皮)

樹皮は幹の肥大成長に伴ってどんどん新しい皮に入れ替わります。若い木はみずみずしい樹皮をしていますが、木が古くなるにしたがって元気がなくなると古い皮が長く残るようになってコケなどがつくようになります。まだ若いのに古い木のようにつやがなくコケなどがついているような木は弱っているサインでもあります。また、支柱や針金などがくい込んでいる場合も減点です。・・・・

6)木の肌はどんな感じですか?(樹皮)
木の肌に傷はなく、生き生きしている。4
傷は少しあるが目立たない。やや肌が荒れている。3
傷が目立ち。肌にも活力がない。2
ひび割れて皮が剥げている。樹皮が枯死。傷口から腐朽。1

7)太い枝・幹・根元からひこばえ、胴吹きが出ている。

根元からでている小枝を「ひこばえ」、幹から出ているものを「胴吹き」といい、上方の枝が弱ったり、根が弱ったりした時など緊急事態で芽吹いたものです。これらの葉は上のものより大きく色が薄いのが特徴です。なお、一般に針葉樹には出ません。

7)太い枝・幹・根元から小枝(ひこばえ、胴吹き)が出ている。(針葉樹は無回答。)
ひこばえや胴吹きは出ていない。4
ひこばえや胴吹きが少し出ている。3
ひこばえや胴吹きがたくさん出ている。2
上の方の枝が枯れだし、しかも根元からひこばえが出ている。1

8)葉の大きさはどうですか?

葉は光合成だけでなく、その気孔から水分を蒸散しています。根が弱ったりして水分が不足すると水分の蒸散を少なくするため上の方ほど葉を小さくします。葉の大きさは樹種によって違いますので、他の健全な木とよく比べてみましょう。

なお、葉が充分に展開していない時期はこの項目はとばして下さい。

8)葉の大きさ (ひこばえや胴吹き以外の葉で判断。落葉期は無回答。)
すべての葉の大きさは普通または大きい。4
やや小さい葉が少しある。3
小さい葉が著しく多い。2
わずかな葉しかなく、それも小さい。1

9)幹や太い枝に損傷や異常はありますか?

幹や太い枝に傷ができると内部に腐朽が進行することがあります。木は空洞になっても生きていけるのですが、元気な木はそのまわりの幹を急いで太らせて補強し重い体を支えようとします。
弱っている木はますます腐朽が進行し、やがて折損し、衰弱枯死していきます。
大きな傷のあるものは減点となります。

9)幹や太い枝に損傷や異常はありますか?
幹や太い枝に損傷はない。形も自然。4
小さな損傷がある。また幹や太い枝に膨らんだ部分がある。3
大きな損傷がある。腐朽部、空洞部がある。大きなふくらみがある。2
大きな空洞が出来ている。1

※採点表(地上部の診断)

全項目を診断針葉樹や落葉時期の診断診断結果
32~36点29~32点健全と思われます。
25~31点21~28点あまり元気がありません。
16~24点14~20点ひどく衰弱しています。
9~15点7~13点枯死の危険が高いです。

 

2 木の周りの様子を観察しよう!

木は自ら動けませんので、どんな場所に生えているかで木の運命は大きく変わってしまいます。

1)枝を思いきり伸ばせる空間がありますか?

建物や他の木が邪魔になって枝が自由に伸ばせなかったり枝を切られているとしだいに弱っていく要因になります。

1)枝を思いきり伸ばせる空間がありますか?
枝がのびのびできる広い場所に生えている。4
周りの木と少し接触している。3
他の木や建物などに囲まれている。2
周りの木が覆いかぶさっている。1

2)根を思いきり伸ばせる場所がありますか?

根は養水分の吸収だけでなく、木が倒れないように支える役目もしています。少なくとも四方の枝の広さと同じくらいの広さが必要です。

2)根を思いきり伸ばせる場所がありますか?
根を広く自由に伸ばせる。4
ほぼ枝先(枝張り)の下までの範囲は伸ばせる。3
何本か並んで(密植)植えられている。2
根元周りを囲まれたり、狭い植木鉢のような場所(植桝)に植えられている。1

3)土の様子はどうですか?落ち葉はありますか?

落ち葉はミミズや微生物が分解することで土にかえり、ふたたび樹木に吸収されます。落ち葉がないと微生物も少なくなり、堅く痩せた土になっていきます。・・・

3)土の様子はどうですか?落ち葉はありますか?
土はやわらかく、落ち葉もたくさん落ちている。4
落ち葉は少しあるが、土はさほどやわらかくない。3
落ち葉がなく、きれいに掃除されている。2
根元周りをアスファルトやコンクリートなどで舗装されている。1

4)過去に根を切られていますか?

根を切られると養水分を充分に吸収できなくなるだけでなく、傷口からさまざまな病原菌が侵入しやすくなります。根の切除は木の生存に直接影響します。

4)過去に根を切られていますか?
切られていない。4
少し切られている。3
かなり切られている。2
新しい建物や塀などに囲まれ、ほとんどの根を切られている。1

5)木の下を人が通りますか?土は踏み固められていますか?

根は土の中で呼吸しています。周りを踏み固められると土の中に空気が入らず、根は弱っていきます。

5)木の下を人が通りますか?土は踏み固められていますか?
人がほとんど入らない。4
人が少し入る。たまに踏みつける。3
人や車がときどき踏みつける。2
たくさんの人や車が踏みつける。1

6)日当りはどうですか?

木は光がないと生きられません。基本的に木はみんな日光が大好きです。しかし、樹種によって日陰では生きられない木と多少の日陰なら我慢して生きられる木があります。

6)日当りはどうですか?
良い4
少し日陰。(半日以上)3
だいぶん日陰。(半日以下)2
ほとんど日が当らない。1

7)水はけ(排水)はどうですか?

水はけの悪い場所は多くの木が嫌います。地下水位が高いと根が呼吸できず、根も空気を求めて地表面だけに伸張します。根が浅いと乾燥害に弱い脆弱な木になります。

7)水はけ(排水)はどうですか?
土の表面にコケが発生していない。浮き根もない。4
土の表面にコケが発生しているところがある。3
木の根が土の表面に浮き出ている。2
たくさんのコケが勝手にはびこり、常にジメジメしている。1

※採点表 (木の周りの様子)

全項目を診断 診断結果
22~28点木が元気に育つ場所です。
15~21点良い場所ですが、少し問題あり。注意してみましょう。
9~14点良い場所ではありません。木が病気になりやすいです。
8点ここでは木は健全に育つことができません。

 

3 病気や衰弱を知らせる生きものなど

木を枯らす原因にもなる動物や植物の多くは木が弱ってから住みつきます。木が健全なときは木はこれらのものを寄せ付けませんので、これらは木が弱り始めたことを知らせてくれています。
根本的な衰弱原因を探りましょう。

※木からのSOSを知らせる生きものはいますか? 発生程度
幹や太い枝にキノコやサルノコシカケが出ている。
枝にヤドリギが付いている。
幹にコケやコケのようなもの(地衣類)がついている。
アリが幹の中で巣をつくっている。
幹にカミキリムシ幼虫の穴がある。(穿孔虫)
枝にツル植物が絡みついている。
枝葉に虫害が多発している。(アブラムシ、ケムシ類など)
枝葉や花、実に病害が多数ある。(病斑やカビなど)

 

これらの指標による採点はあくまで大まかな基準であり、木の健全度をすべて把握できるわけではありませんが、常にいろいろな木を見てその「声」を聴く習慣をつけると、だんだん診断のコツも分かってくるかと思います。
(参考:日本樹木医会資料)


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