(四季の花木) “ハクサンボク(白山木)”
(四季の花木) “ハクサンボク(白山木)”
皆さんは「ハクサンボク」という木をご存知でしょうか?
レンプクソウ科(旧分類ではスイカズラ科)、ガマズミ属の常緑中木で、我が国原産の花木です。
漢字では「白山木」と書くので石川県の「白山」に産すると誤認されやすいのですが、実際は白山には自生していません。
もともと暖地性の樹木で寒い所は苦手のようですね。
自生地は小笠原や伊豆、そして九州地方などの暖地の海岸沿いや林地で、昨今は関西や関東でもしだいに庭木としても使われるようになりました。
この木の魅力は何といっても常緑樹らしからぬ彩りの変化や季節感、そして野趣あふれる葉や枝ぶり、樹姿でしょうか・・・。
作庭にかかわるものとして、このような印象の常緑樹は多くなく、使い勝手の良さもあって貴重な存在の木なのです。・・・
花は4月ごろです。
白色の集散花序でアジサイのように小さな花が密集してたくさん咲きます。
(ちなみによく似た樹木に同じ「属」の「ガマズミ」がありますが、ガマズミは落葉樹でしかも本種のような葉の光沢はありません。)
性質は日当たりを好みます。でも、適度な湿気や土質があればあまり場所も選ばず丈夫で、半日陰にも十分耐えてくれます。
また、雑木の庭では、他の樹木とも馴染みがよく、大振りな葉姿を活かして自然風の樹林地のアクセントに使えますし、小さな庭では主木にも使えます。・・・
以前、お気に入りの灌木に「トサミズキ」を取り上げましたが、この木はそれに並ぶお気に入りでもあります。
使い勝手もよく、条件が許せばついつい植栽計画に取り入れてしまいます。
ただ、一本一本の個体差が大きいので、できるだけその空間に合ったものを探すようにしています。
このように常緑ながら特有の野趣、風情があり、しかも花や実、紅葉も楽しめる魅力あふれるこの木をぜひ知っていただければと思います。・・・
この木に初めて出会ったのは、この仕事を始めて間もない頃だったと思います。
当時、大阪千里の日本万国博覧会記念公園「日本庭園」の緑地管理に携わっていました。
日本庭園の中世地区の小高い丘の上に「万里庵」という小さな茶室があるのですが、その庭の一隅に見慣れない木がありずっと気になっていました。
当時、知らない木を見つけると気になってしかたなく、懸命に樹種の同定をしていた頃ですが、自分で調べてもすぐには分かりませんでした。
庭の建設当時を知る緑地指導員Sさんに尋ねると、
「ハクサンボクという九州から取り寄せた木でこの辺では珍しい木だよ」と教えられたのを覚えています。・・・
それから、何年も経ってから、たまたま縁あって九州熊本を数日かけて旅行する機会がありました。
その時、この見慣れない木をあちこちで見かけて、初めて出会った時のことを思い出しました。
特に阿蘇の黒川温泉あたりで見かけたのがとても印象的で、巧みに庭の植栽に取り入れられていました。
当時、熊本へはまだ歩き始めたばかりの幼い息子の手を引いての初めての旅でした。
その時の旅の想い出が庭や樹木の印象とともに深く心に残っていて、いつか自分の作庭でもこの木を使ってみたいと思うようになりました。
昨今ではすっかり雑木の庭の定番ともいえるほどポピュラーな木で、近くの樹木園でも常に目にします。
容易に作庭に組み込めるようになったのは本当にありがたいことですね。
樹木の印象、イメージはいつも何かしらの想い出とともに記憶に焼き付いていることが多く、単なるその木の魅力以上のものが自分に語りかけてくるように感じます。・・・