魅力の尽きない木 トサミズキ
四季の樹木
トサミズキ(土佐水木)
マンサク科 トサミズキ属 落葉低木 花期:3~4月
言わずと知れた早春を代表する落葉花木のひとつです。
葉の出る前、蕾が割れると淡黄色の小花がしだいに穂状に垂れ下がってきます。我が家の玄関先にも植えているのですが、その風情はいかにも「春が来た!」という華やかさがあり、今年も周りを明るく演出してくれています。
この木は私の最も好きな樹木のひとつで、条件が許すかぎり自然と植栽プランに取り入れてしまいます。それは存在感のある花ももちろん魅力があるのですが、何よりその野趣あふれる「樹姿」に魅かれてしまうからです。地ぎわから四方に力強く伸び上がる幹、ジグザグに屈曲する枝先、そして目を引く大ぶりな葉など、少し粗っぽい印象はありますが、それがかえってこの木の大きな魅力になっています。
使い方は単植にしてもいいですが、できれば自然風植栽のなかのアクセントに用いると納まりがよく非常に使い勝手の良い樹木です。一般的には樹高1m程度のものを使うことが多いですが、あまりに狭過ぎる空間には不向きですので、その場合にはイメージはより繊細にはなりますが近縁種の「ヒュウガミズキ(日向水木)」を用いるとよいと思います。
随分と前になりますが、初めて4mを越すような大きなものを見たときにはちょっとした衝撃を受けました。それは一瞬何の木かわからないぐらい私にとって意外だったのですが、頭上から覆いかぶさってくるその姿にまた新たな魅力を発見するとともに、野生のトサミズキの姿を垣間見たようでワクワクしたことを覚えています。(いつかは自生地での姿を見に行きたいものです・・・。)
この木の自生地はその名のとおり土佐(高知県)で、しかも蛇紋岩地帯だけに限られているようです。でも、ここにしか自生しないとはいえ、この木は暖地の公園や庭園などどこでもよく生育してくれます。つまり、決して蛇紋岩地帯だけが好きなのではなく、おそらく他の場所では他の樹木との生存競争に負けてしまったのでしょう。結果的に生育条件の悪いところで細々と暮らしてきたのかも知れません・・・。
このような話は「植物」の世界ではよくあることですが、「人」も適材適所、誰もがおのおの自分らしく生きられる場、輝く場が必ずあるものと思います・・・。
ところで、頭上から覆いかぶさるような姿を演出したくて、我が家のトサミズキはあえて道路に面した擁壁上に植えています。穂状に垂れ下がった花を下から見上げるのもなかなか魅力的で面白いものです・・・