やってみよう!ガーデンデザイン3(作図および図面の種類など)

(ガーデンデザインの進め方 つづき)

STEP5 基本図面の作成

このようにして基本デザインがまとまったら、次はすべての図面の基本となる「平面図」の作成をはじめます。

詳細を検討してきたさまざまな要素(テラスやデッキ、通路、塀、樹木など)の幅や長さ、形状等を正確なスケールにもとづいて図面化していきます。

平面図の縮尺については敷地の広さや使う図面の大きさにもよりますが、造園図面の場合にはできれば1/50程度にすることである程度細かいところまで表現することができるでしょう。縮尺は「三角スケール」を使うと便利です。

※実際の長さ1m(1000mm)を図示する場合・・・

縮 尺1/101/201/251/301/401/501/1001/200
図面上の長さ(単位:mm)100504033.32520105

▲ 平面図

基本図面である「平面図」がまとまったら、必要に応じて「立面図」や「断面図」、あるいは「パース(透視図)」、「アクソメ図」など三次元の図面を作成します。

 

1.平面的に表現する図面の例

「平面図」 : 対象物を真上から見た(または対象物の水平断面を真上から見た)図面。配置や寸法等を示す基本図面で、縮尺を合わせて描きます。
「立面図」 : 対象物を真横から見た図面。縮尺を合わせて描きます。遠近感は表現しませんが、対象物の外観、見た目がわかります。
「断面図」 : 対象物を鉛直方向に切断した断面を見た図面。縮尺を合わせて描きます。構造物の断面や地下部分の構造、高低差の表現等に使われます。

 

▲ 立面図 (フェンス側)

▲ 断面図 a – a’

2.立体的に表現する図面の例

(1)「透視図(パース)」:空間の奥行きや遠近感を表現する図法で、「消点」を決めてそこへ集まる線を基準に描きます。遠近法にしたがって遠くのものほど小さくなり、地平線上の「消点」で消えるように描きます。「透視図」は目で見るのと同様な遠近感が現れるように描きますので、完成後のイメージをダイレクト伝えることができます。
「透視図」には基本的な「1点透視図」のほか「2点透視図」や「3点透視図」など複雑なものもあります。場面に合った透視図法を選ぶことで自分の伝えたいことがより正確に伝わりますが、とりあえずは「1点透視図」をしっかり描けるようにしましょう。

● 1点透視図: 消点を1つ決めて、すべてのものがそこへ収束するように描く透視図。最も単純な透視図法。正面からみた構図に奥行きを出したい時などに効果的です。「平行透視図」とも言います。
● 2点透視図: 消点を2つ決めて描く透視図法。モノを斜めからみた構図に効果的で、建物の外観を描くときなどに使います。人が日常的に目にするものに近いです。
● 3点透視図: 消点が3つあります。3つ目の消点を加える事で、大きなものを見上げたり、上から見下ろす構図に効果的です。スケール感が強調されるのでインパクトがあります。

 

~ 「1点透視図」のおおまかな作図手順 ~

 

 

① 準備作業として、平面図上にグリッド(方眼)を描きます。

② 「構図」を決定します。(視点の位置)

③ パースを描く用紙に「基線(画面位置)」と「水平線(視点高さ)」、「消点」を描きます。

④ 平面図上に描いたグリッドをパースの中に描いていきます。(グリッドの縦方向のラインを消点に集まる線(パースライン)として描きます。)

⑤ グリッドの横方向のラインを「基線」「水平線」と平行に描いていきます。(奥へ行くほど奥行き幅が狭くなります。グリッドの対角線との交点を利用します。)

⑥ 床のグリッドを頼りに、描きたいモノの位置、形状を落とし込んでいきます。

⑦ 描きたいモノの高さを描きます。 ※パース上の縮尺は必ず基線上で測ったうえで、消点へのパースラインに沿って高さを合わせて下さい。

⑧ こうして描きたいモノの姿を立体的に浮かび上がらせます。・・・

 

▼ (参考模式図): 投影画面に映し出された画像が透視図(パース)となります。

※ ここまでがパースの下描き作業となります。理論や手順がわかれば誰でも機械的な作業で描けるものです。
※ 「構図」の決め方で図の効果、印象等は変わります。(1点透視図の「構図」を決定する条件は「視点」の位置です。上下、前後、左右に動くことで仕上がりの構図に影響します。)
※ このあとの仕上げ作業で、人によって差が出てきます。・・・

仕上げ作業
透視図法の宿命として3次元のものを2次元で表現するため周辺部などで微妙なブレが生じてきますので、最終的には違和感のないように「補正」することが多いものです。
最後の仕上げのときには全体の強弱や立体感、陰影などを意識しながら画面を引き立てるように描き込んでいきます。絵心を発揮して、自分らしい「線」で伝えたい雰囲気を表現してみましょう。造園パースの場合、樹木などの自然素材が多いのでフリーハンドのタッチが生きてきます。ぜひチャレンジしてみて下さい。

▲ パース(透視図)

また、透視図ではないですが、下記のような簡易な立体的図法もあります。

(2)「アクソメ図」:「透視図」と違って「消点」がなく、奥行き方向の線はすべて平行になります。遠近法は効いてませんのですべての箇所を同じ縮尺寸法で描くことができます。ただ、見た目に奥の空間が広がって見え違和感のある図となりますが雰囲気は伝わります。なにより作図が簡単ですし、「透視図」に比べると難易度もかなり低いですのでぜひ描いてみて下さい。

「アクソメ図」の描き方:平面図をそのまま水平線に対して任意の角度をつけて傾けて配置し、対象物の各位置から垂直線を立ち上げて描いていきます。もっとも簡易な手法です。

▲ 平面図

▲ アクソメ図

STEP6 詳細図の作成

続いて必要に応じて「詳細図」の作成をはじめます。

「詳細図」としては、植栽計画図のほかデッキやフェンス、舗装、門柱などの構造物の詳細図、照明や給排水等の設備計画図などです。

なお、詳細図は一般的に平面図よりも縮尺を拡大して描かれることが多いです。(1/10、1/20など)

▲ 詳細図例(階段等詳細図)

▲ 詳細図例 (木柵詳細図)

植栽計画図

植栽計画では、基本デザインに適した植物を、高木から灌木、地被類という順でさまざまな側面を確認しながら選定していきます。

選定した植物はその詳細情報(品種名、高さ、葉張り、株立ち、支柱の仕様、ポット径、数量など)を「植栽リスト」として整理すると分かりやすいでしょう。


 

以上が大まかなガーデンデザインの進め方になります。・・・

ただ、これらの図面等はこのままではあくまで机上の計画図に過ぎません。
どれだけ素敵なデザイン図面でも、実際の施工があってはじめて実現できるのです。・・・

ですから、デザイナー、設計者は実際の作庭にもぜひかかわっていただきたいと思います。
(私も何度かデザインだけを担当し、出来上がった庭を見に行ってガッカリしたことがあります。これは単に施工者が悪いのではなく、自然素材を多用する作庭では図面だけでは表現しきれないことが多々生じてくるためです。・・・)

 

ぜひ、設計、作図だけに留まらず、実際の作庭にもかかわって下さい。

その貴重な経験がまた次のデザインに活かされていくことになるからです。

あなたらしい素敵なガーデンデザインを期待しています!

 

 

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